『民王』
池井戸 潤
総理大臣とその息子の心が入れ替わってしまい、さらには大臣や野党党首もそれぞれ子どもと心が入れ替わってしまい……というドタバタ小説。
なんというか、お手本のようなエンタテインメント小説って感じだったな。悪い意味で。
起承転結がはっきりしていて、ほどほどに諷刺とユーモアが散りばめてあって、スピード感があって、後半にはピンチが訪れて、主人公が熱いセリフを吐いて、いろいろあったけど最後は大団円……とまあ、ほんとにエンタテインメント小説の教科書を読みながら書いたのかなってぐらい。
よくできているし誰が読んでもそこそこ楽しめるだろうなって感じの小説だけど、終わってみればあんまり印象に残らない。
官能小説のストーリーぐらい印象に残らない。
ぼくは「半端なリアリティ」が嫌いだ。
フィクションなんだからむちゃくちゃ書いたっていい。だけど世界感は統一させてほしい。どんなに無茶な設定でも、その中では整合性を持たせてほしい。
『民王』はまさに「半端なリアリティ」を持った小説だった。
もう「総理大臣と息子の心が入れ替わる」って時点でむちゃくちゃなんだから、そこに理由なんていらないんだよ。どれだけ理由をつけたって嘘くさくなるだけなんだから「気がついたら入れ替わっていた」だけでいい。
それなのに長々と、やれテロだのやれ製薬会社の陰謀だの、愚にもつかない理由を並べはじめる。
うるせーよ。どんな技術だよ。
なんで心を入れ替える技術を使って総理を息子と入れ替えて失脚させようとするんだよ。まわりくどすぎるだろ。企んだやつが総理になるほうがよっぽど手っ取り早いじゃねえか。
矛盾点を書きだしたら永遠に終わらないのでもうやめとくが、とにかく設定がぐずぐず。
もっとうまく読者をだましてくれよ。
政治を扱った小説ということで政治家に対する諷刺も効かせてるんだけど、その諷刺もやたらとお行儀がよい。
「ほら政治諷刺をしてみましたよ。こういうの書いたらみなさんおもしろがるでしょ」
という小手先テクニックって感じなんだよね。笑えねえよ。ザ・ニュースペーパーかよ。
やるなら政党から怒られるぐらいやってよ。
皮肉もメッセージもエピソードも、ぜんぶどこかで聞いたことのあるような平べったい内容で、なんでこんなワイドショーの薄口コメントみたいな小説を読まなきゃいけないんだとだんだん嫌になってきた。
池井戸潤氏の『空飛ぶタイヤ』は自分の経験を活かした熱いメッセージが胸に響く小説だったのに、『民王』はぜんぜんだった。
あ、言っておくけどつまんなかったわけじゃないよ。おもしろかったよ、そこそこ。
そこがまたイヤなんだよね。安定感がありすぎて。少しもドキドキしない。
おもしろくなくてもいいからこれを書くんだ! みたいな文章がひとつもなかった。
朝の連続ドラマ小説のような平和きわまりない小説だった。
その他の読書感想文はこちら
政治を扱った小説ということで政治家に対する諷刺も効かせてるんだけど、その諷刺もやたらとお行儀がよい。
麻生太郎元総理がぜんぜん漢字を読めなかったことをなぞっているんだろうけど、こんなのは当時さんざんイジられていたことだから、ぜんぜん毒っけがない。
「ほら政治諷刺をしてみましたよ。こういうの書いたらみなさんおもしろがるでしょ」
という小手先テクニックって感じなんだよね。笑えねえよ。ザ・ニュースペーパーかよ。
やるなら政党から怒られるぐらいやってよ。
皮肉もメッセージもエピソードも、ぜんぶどこかで聞いたことのあるような平べったい内容で、なんでこんなワイドショーの薄口コメントみたいな小説を読まなきゃいけないんだとだんだん嫌になってきた。
池井戸潤氏の『空飛ぶタイヤ』は自分の経験を活かした熱いメッセージが胸に響く小説だったのに、『民王』はぜんぜんだった。
あ、言っておくけどつまんなかったわけじゃないよ。おもしろかったよ、そこそこ。
そこがまたイヤなんだよね。安定感がありすぎて。少しもドキドキしない。
おもしろくなくてもいいからこれを書くんだ! みたいな文章がひとつもなかった。
朝の連続ドラマ小説のような平和きわまりない小説だった。
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