2018年11月6日火曜日

瀬戸内寂聴の予約キャンセル

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予約って怖いよね。

予約できる人ってすごいよね。ぼくが美容院に行かない理由もそれ。予約しないといけないから。

だって予約するってことはキャンセルしたり遅刻したりできないってことじゃない。

ずっと気にしてなきゃいけないんだよ。
一週間も前からああ今度の土曜日美容院だ、他の予定入れたらだめだ、体調万全にしとかなきゃ、髪に良さそうなものを食べよう、明日は美容院だから髪をしっかりかわかしてから寝よう、少なくとも三時間前には起きとかなきゃ、あと一時間三十分だ、今家を出たら早く着きすぎるからあと十五分したら出よう、でもやっぱり早く着きすぎたあんまり早く入店しても迷惑かな。

ずっと美容院のために脳のリソースを使わなきゃいけない。だったら予約なしで床屋に行って一時間待たされるほうがいい。

飲食店やホテルには、予約をしたのに来ない客がけっこういると聞く。
予約を忘れたのか、それとも覚えていたのにキャンセルが面倒で放置したのか。
いずれにせよ、そういうことができる豪胆な神経がちょっとうらやましい。周囲は苦労するだろうが、本人はいたって幸せに生きていけるように思う。


キリストやブッダやマザーテレサや瀬戸内寂聴のような「心の広い人」は予約キャンセルの連絡を入れない。たぶん。

よいではありませんか。行けなくなったのはめぐりあわせがよくなかった、ただそれだけのこと。わたしの予約は別の誰かのもとへ行く。そしてまた誰かの予約がわたしのもとにやってくる。すべての予約はつながっているのです。
あなたが過ごしている時間はあなたひとりのものではないんです。世界中の人、あらゆる生物と共有しているのです。それを独占しようだなんて考えはやめましょう。

「ご予約のお時間ですがいらっしゃらないので確認のお電話をさせていただきました」と言われた瀬戸内寂聴さんはきっとこう言う。

「いやじっさいお店に迷惑かけてるのにそんなふうに開きなおって大丈夫なの」
とヒヤヒヤしているのは、隣で聞いているぼくだけだ。

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