2017年12月9日土曜日
トイレ・ウォーズ ~ションドラの逆襲~
ほとんどの女性は知らないと思いますが、男性用の公衆トイレには用を足したあとのちんちんを乾かすためのドライヤーがついています。
正式な名前は何というのか知りませんが、ぼくが生まれ育った地域では「ションドラ」と読んでいました。しょんべんドライヤーの略でしょうね。
ションドラは髪の毛用のドライヤーとはちがい、ちんちん専用の細長くて銀色のドライヤーです(ちなみに銀色なのは西日本だけみたいですね。東京駅のトイレで真っ白のションドラを見たときはびっくりしました)。
温度や風量の調整はできず、ただ風が出るだけの代物です。小便器の上にあるセンサーに手をかざすとションドラが伸びてきて、ごーっと風が吹きだします。10秒ほどで勝手に止まり、また引っこんでいきます。ウォシュレットトイレのノズルに似た動きです。
紙を手で持って拭く必要がないので衛生的ですし、風でちんちんを乾かすときはなんともいえぬ爽快感があります(冬場はちょっと寒いですけどね。冬は温風が出てくれたらいいのに)。
そんなションドラに関する失敗談をひとつ。
今でこそほとんどの公衆トイレに設置されているションドラですが、ションドラが日本に普及したのは1980年代のことで、ぼくが子どもの頃は田舎で育ったこともありションドラなんてものは見たこともありませんでした。
はじめて見たのは、小学六年生のとき、家族旅行で行った京都でのことでした。
京都駅のトイレに入って小便器に向かっておしっこをしていると、目の前に見慣れぬボタンがあります(昔はまだセンサー式ではなく押しボタン式でした。衛生的でないので後にセンサー式でになったのでしょう)。
もちろん「排尿完了後にこのボタンを押してください」というような注意書きがあったのだとは思いますが、なにしろ好奇心旺盛な男子小学生のこと、注意書きを読むより早く、押したらどうなるんだろうとボタンに手を伸ばしていました。
さあたいへんです。なにしろまだおしっこが出ているのですから。
うにょーんとションドラが伸びてきて、これはなんだかやばいと思ったけれど一度出はじめたおしっこは止まらない。ションドラはぼくの股間に向かって風を吹きつけます。放出したおしっこは逆風にあおられて霧状になり、ぼくのパンツとズボンを盛大に濡らしました。
うわあああと思わず声をあげましたが、まだおしっこが出ているから便器の前を離れるわけにもいかない。そのまましばらくおしっこの霧を浴びつづけてしまいました。
幸い旅行中だったためにリュックに着替えが入っていました。あわてて個室に駆けこんで着替えましたが、トイレから出たとたんに目ざとい姉から「あんたなんでさっきとズボンがちがうの」と言われてしまいました。事の顛末を正直に話すと両親と姉から「あんたばかねえ」と大笑いされました。
最近のションドラは水流を感知するセンサーがあるので、おしっこが出ている間は手をかざしても風が吹くことはありません。
きっとぼくみたいな不幸な事故が多発したために改良されたのでしょう。
あんな悲しい思いをするのは、ぼくの世代で最後にしてもらいたいものです。戦争の悲惨さを語り継ぐ戦争体験者のように、ぼくもションドラの逆襲の恐ろしさを後世に語り継いでいきたいと思います。
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