2017年12月21日木曜日

目をつぶったろう

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小学五年生のとき。
休み時間に体育館周りのテラスでボールを転がして遊んでいたら、担任のヤスダ先生に見つかった。

ふつうの先生なら「ボール遊びは運動場でしなさい!」と叱るところだが、このヤスダ先生はすばらしい先生で、頭ごなしに叱りつけるということをしない人だった。

ぼくらがどんな遊びをしているか聞くと、
「なるほど。ほんまはテラスでボール遊びをしたらあかんけど、ここはあんまり人も通らんし、ボールを転がしてるだけやったら窓を割ることもないやろうな。危なくなさそうやから、目をつぶったろう」
と云った。
なんと理解のある先生だろう。

ところが、小学五年生の男子というのはヤスダ先生が思っているよりもバカだった。

数日後、別の教師に見つかって叱られたときに、ぼくらは
「でもヤスダ先生はやってもいいって言ったで!」
と言いかえした。

なんとバカなんだろう。ヤスダ先生は「ほんまはあかんけどおれは目をつぶる」と言ってくれたのに、ぼくらにはその心配りがまったく理解できず「やってもいいと言われた」と解釈してしまったのだ。

ぼくらを叱った教師からヤスダ先生に苦情が入り、ヤスダ先生が怒られたらしい。
後でぼくらを呼びだして「おまえらなあ……。目をつぶるってのは、やってもいいってこととはちゃうんやで……」とつぶやいたヤスダ先生の寂しそうな顔が忘れられない。

当時はそれでもなぜ怒られたのかよくわかっていなかったけど、今ならわかる。
ヤスダ先生、バカでごめんなさい。

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