『大丈夫かい山田さん!』
中崎タツヤ(漫画) 島本慶(文章)
中崎タツヤの漫画に惹かれて買った本。島本慶という人のことはまったく知らなかった。
五十歳をすぎてから歌手になったという人で、"舐達磨親方" 名義で風俗記事を書いたりもしていたとか。つまりわけわかんない人ですね。"舐達磨親方" は西原理恵子の漫画にときどき名前が出てくるので聞いたことだけはあった。
エッセイはキレが良くない。とりとめのない話をひたすらだらだらと書いている。ザ・酔っ払いの話って感じ。
役に立つ知識は得られないし、人生に大きな示唆を与えてくれるような話もない。でもまあそういうものだと思えばこっちも「本は読みたいけど頭は一デシベルも使いたくないな」ってときに開けばいいから気楽に読める。
正直ほとんどのエッセイはつまんないんだけど、ときどきすっごく乱暴な持論を展開しているのがおもしろい。
ふはは。イカれてるなあ。
完全に禁止区域でタバコ吸ってるおまえが悪いじゃねえか。
酔って書いたんだろうなあ。”心の中で「……」と心の中で叫びつつ” とか文章もおかしいしな。校閲してないのかな。
かつて人々が文章を発表する手段として書籍や新聞しかなかった時代。何人ものチェックが入るから、むちゃくちゃなことは書けなかった。
インターネットの普及によって誰でもかんたんに自作の文章を発表できるようになりどんな乱暴なことでも自由に書けるように……とはならなかった。残念ながら。
いや、昔のインターネットってそういう場所だったんだけどね。いわゆるチラシの裏的な場所。どうせ誰も読んでないから何を書いてもいい場所、という雰囲気があった。
でも今のインターネットでは、誰かの癇に障ることを書いたらいともかんたんに炎上する。批判のレベルを超えて身の危険を感じるぐらいの攻撃を食らうこともある。結局、インターネットでも紙媒体と同じように、いやもしかするとそれ以上に、正しさ(というか無難さ)が求められるようになってしまった。
この「喫煙禁止区域でタバコを吸ってたら注意してきた人がいたので毒づいている話」なんか、著名人がブログで発表したりしたらあっという間に炎上するだろうね。有名人じゃなくたってタチの悪い人に見つかったら大炎上だ。
でも紙の本ならたぶん大丈夫。拡散させにくいから。
ブログやSNSの素人の投稿よりも出版社が出している本のほうが乱暴なことを書いても許される時代が来るとは思わなかったなあ。
ぼくらが読みたいのは正しいことだけじゃないんだよね。
論理的にむちゃくちゃでも、べつの誰かを傷つける言葉でも、場合によっては自分を攻撃する言葉であっても、楽しませくれるならかまわない。
どこか別のサイトから切り貼りしてきただけの文章を並べたWEBサイトじゃなくて、乱暴でもまちがっててもいいから自分の言葉で語っている文章なんだよ。ぼくがインターネットで読みたいのは!
聞いてるかアクセス数目当てにコピペでコンテンツつくってるやつら!
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