2017年12月5日火曜日

氷漬けになったまま終わる物語

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四歳の娘とともに、今さらながら『アナと雪の女王』を観た。
あれだけ話題になっていた作品だがぼくが観るのははじめて、公開当時ゼロ歳だった娘ももちろん初鑑賞だ。

噂にたがわぬ良い作品だった。テンポの良い展開、映像の美しさ、わかりやすくもほどよく意外性のあるストーリー、心地いい音楽、上品なユーモアといかにもディズニー映画らしい魅力にあふれていた。


で、「この人は誰?」「今エルサはどうなってるの?」としきりに訊いてくる娘に対して「クリストフっていう氷を売っている人だよ」とか「今はひとりで氷のお城にいるよ」とか説明しながら観ていたのだが、終盤のアナとエルサがピンチに陥るシーン、ふと見ると娘の様子がおかしい。
「アナは凍っちゃったん?」と尋ねるその声は、完全に涙声。顔をのぞきこむと、泣いてこそいないものの目を真っ赤にして涙をいっぱいに浮かべている。


なんとひたむきな鑑賞姿勢だろう、とその姿に感動してしまった。

『アナと雪の女王』を観るのはぼくもはじめてだけど、こっちは「まあディズニー映画だからいろいろあってもみんな助かって誤解も解けて悪いやつは罰を受けて、最後はみんなで楽しく踊るんでしょ」という心持ちで観ている。エルサが捕まって牢屋に入れられるシーンも、アナが凍ってしまうシーンも「このままのはずはない」と思っている。これまでに観て、聴いて、読んだ数多くの物語の経験から知っている。

だが四歳児は己の中に蓄積した物語の量が圧倒的に少ないから、「この先どうなるか」という選択肢を限定せずに観ている。登場人物が「このままじゃ死んじゃう!」と言えば、物語慣れしている大人は「ということは助かる道があるのね。そして助かるのね」と読みとるが、四歳児は素直に「死んじゃうんだ」と思う。


もちろん最後はハッピーエンドになるが(ネタバレになるが、エルサが暗い牢屋に閉じ込められてアナが氷漬けになったまま終わらない)、最後まで観終わった娘はしばらく茫然自失だった。
もし自分が殺されそうになって間一髪で助け出されたら、こんな状態になるのではないだろうか。
四歳児がストーリーをどこまで理解できたかはわからない。だが、彼女は完全に物語の登場人物たちと同じ体験をして同じ気持ちを味わっていたのだ。

ドラえもんの道具に『絵本入りこみぐつ』という、絵本に入って登場人物と同じ体験ができる道具があるが、幼児はそんな道具を使わなくても同じことができている。
なんともうらやましい話だ。


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