「はっはっは。よくぞここまでたどりついたな勇者よ。おまえの力はなかなかのものだ。殺すには惜しい。どうだ、わたしの手下にならぬか? 世界の四分の一をおまえにやろうじゃないか」
「四分の一だと? ふざけるな魔王! ぼくらがこれまでどれだけの犠牲を払ってここまでたどりついたと思っているのだ!」
「というと……?」
「四分の一では割に合わないと言っているのだ!」
「なるほど正直なやつだ。では三分の一でどうだ?」
「こちらとしてはそれは呑めない条件だ。これまでのコストを考えると、70パーセントはもらわないと利益が出ない」
「70パーだと! そんな法外な」
「こちらとしてはおまえを倒してすべてをもらってもいいのだぞ」
「そこまで言うのならこちらとしても考えがある。じつは、べつの勇者グループにも見積もりをとったのだが、そこは55パーセントでやるといっている。そちらにお願いして、共同事業でおまえらを倒すとしよう」
「なにっ。待て待て待て。ほかにも勇者がいるなんて聞いてないぞ」
「相見積もりをとるのはビジネスの基本だ」
「……わかった。しかたがない。50パーセントずつ折半しようじゃないか」
「たしかにそのへんが妥当だろうな。今後の付き合いもあるから、ここで無理にごねて遺恨を残したくはない。よし、50パーセントで手を打とう」
「だが問題はどう世界を半分に分けるかだ」
「それはもちろん、この魔王の城がある北半球をわたしがもらい、おまえたち勇者グループは南半球を統治するのだ」
「ふざけるな! こちらのほうが圧倒的に不利じゃないか! 世界の主要な都市のほとんどは北半球にあるのだぞ」
「しかし南半球にもエアーズロックとかマチュピチュとか、けっこう有名な観光スポットがあるが……」
「ぼくらは観光のためにここまで戦ってきたんじゃないぞ! ビジネスのためだ!」
「しかしわたしはこの城を離れたくないし……」
「じゃあこうしよう。この城のあるユーラシア大陸はおまえが統治するがいい。ぼくらは南北アメリカ大陸とアフリカ大陸をもらう」
「それだと逆に当方が不利じゃないか?」
「ではオーストラリア、南極大陸と他の島々をおまえにやろう」
「……まあそれなら良いか。中国、ロシア、インドなどの今後の経済成長が見込める国々も手に入るしな」
「あとは細かい話になって恐縮なのだけど、契約書を作るにあたって収入印紙はどちらが負担するのかとか、形としては贈与にあたるので贈与税をどうするのかとか、そのあたりも決めないといけないな」
「それならわたしどものほうにいい司法書士や税理士の先生がいらっしゃるので、相談してみよう。どうすればいちばん税金を抑えられるか聞いてみよう」
「そうしていただけると助かるぞ魔王!」
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