2015年9月16日水曜日

【エッセイ】女性用マスクの快感

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 風邪をひいてマスクをしていると、サイズがあっていないと指摘された。
 マスク大きすぎですよ、と。
 鼻の横にスキマあいてますよ、と。

 翌日ドラッグストアへ行って「小さめ。女性用」と書かれたマスクを買ってきた。
 さっそく装着してみる。
 女性用のマスクを身につける、という行為はちょっと変態みたいでどきどきする。でも嫌いじゃないぜ。

 ぴったり。ジャストサイズだ。
 マスクってこんなにも顔にフィットするものだったのか。
 なんてことだ。
 花粉症を発症してから10年あまり、通算で1,000日はマスクをかけつづけてきたが、ずっと大きめのものをかけていた。
 1,000日間ずっとぼくの鼻の横にはスキマがあいていた。
 だけどそれを疑問に思ったことはなかった。
 その間ずっと花粉やウイルスがスキマから入り放題だったにもかかわらず、
「マスクしてるのにあんまり効果ないなあ」
と鼻水をたらしたアホみたいな顔で首をかしげていた。
 いってみれば、車に鍵をかけながら運転席の窓を全開にしていたわけだ。
 それで「最近車内のものがなくなるなあ」と首をひねっていたわけだから、我ながら相当なおばかさんだ。

 二次元の布で三次元の顔をスキマなく覆うことはできないものだと思ってあきらめていた。
 高い壁に直面したとき、乗り越える方法を探すよりも、乗り越えられない言い訳を探してしまう。
 いつからだろう、そんな大人になってしまったのは。

 なんてちっぽけな人間なんだ、ぼくは。
「小さめサイズ」がお似合いの人間だ。
 自分を過大評価して「普通サイズ」をかけていた自分が恥ずかしい。
 小さめの穴があったら入りたい。

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