最近、こんなブログ記事を見た。
入社二年目の社員に仕事を振るが、数日たってもぜんぜんできていない。その時点ではまだ叱責はせず、何をやったのかを尋ねても返答がない。何がわからなかったのか尋ねると、検索すれば一分でわかるようなことがわからず困っていたとの回答。調べるでもなく、人に訊くでもない。こいつは使い物にならないんじゃないか。
それに対し、いくつものコメントが寄せられていた。賛否両論。
大きく分けると、
「それはその二年目社員が悪い。またはそいつをその部署に配属したやつが悪い」という意見と、
「それは指導する側(つまりブログの書き手)が悪い。数日放置するのではなく、もっと細やかに管理すればその二年目社員も成長する。育成するのが上役の仕事だ」という意見だ。
もちろんブログの書き手以外は当事者たちの実際の働きぶりを知らないわけで、ブログの書き手側の見解だけをもとに判断しているわけだから、正確な判断などできるわけがない。みんなそれぞれ「自分の周りにいる、使えない二年目社員的な人」や「自分の周りにいる、能力の低い指導係的な人」などに当てはめて好き勝手ものを言っているだけだ。
ぼくも実情を知らないから、上記ブログの件についてどっちが悪いとかこうしたほうがいいとか書ける立場にない(そもそもブログ主は愚痴としてつづっていただけで読者からの判断やアドバイスを求めていたわけではなさそうだった)。
ただ「言われるまで何もしないし、やっても成果が低いし、わからなくても調べられないし、他人に訊くこともできない人」はたしかに存在する。
その人が悪いとか言うつもりはない(悪い場合もあるが)。最初に彼を指導した人のやり方が悪かった(たとえば勝手に何かをやれば怒り、わからないことを質問してきたら怒るような指導者)とか、別の部署なら彼はもっと力を発揮できるのにまったく適性のない部署に配置した人事担当者が悪いとかかもしれない。
誰がいいとか悪いとかでなく、人間の能力に差がある以上、こういうことは必ず起こる。
大谷翔平をプロ棋士の世界に放りこめば「使えないやつ」だろうし、藤井聡太をプロ野球の世界に放りこめば「使えないやつ」になる。
で、問題はそういう人の処遇をどうするかだ。
「言われるまで何もしないし、やっても成果が低いし、わからなくても調べられないし、他人に訊くこともできない人」に対して熱心に指導したってあんまり意味がない。
指導すれば成長はする。20点だった人を熱心に指導すれば、30点をとれるようになる。
でも、その間に「言わなくてもそこそこできるし、アウトプットも高いし、わからないときは自分で調べるし、それでもわからなければ他人に訊くこともできる人」のほうは70点だったのが90点をとるようになっていたりする。しかも放っておいても。
差は詰まるどころか拡がっているのだ。
そして、がんばって20点の人を30点に育てた結果、指導する側のアウトプットが80点から60点に落ちてしまったりする。アホだ。
20点の人を30点にするのは、幼稚園や小中学校だったら大事なことだ。教育が目的だから。
でもたいていの組織においてはそうではない。がんばって20点の人を30点にするぐらいなら、同じ労力をかけて70点の人に120点取らせるほうがいい。組織全体として見てもいいことだし、20点の人も性に合わない仕事でがんばらされるのはつらいだろう。120点の人は不満が残るかもしれないが、そこは給与や賞与で評価してやればいい。
20点の人は20点のままでいい。放っておけばいい。
「数日放置するのではなく、もっと細やかに管理すればその二年目社員も成長する。育成するのが上役の仕事だ」
という意見に関しては、前段に関してはその通り、でも後段は誤り。それは義務教育の仕事。
以前読んだ本によれば、アフリカなどの貧しい国では、努力して豊かになれるような仕事自体がそもそも国内にないので、まじめに働く人がすごく少ないのだそうだ。その代わり、一部のエリートは海外に出て、ものすごく稼ぐ。そうすると、エリートの親やきょうだいだけでなく親戚一同がそのエリートからの仕送りをあてにしてますます働くなる、ということがよくあるらしい。
ずるいじゃん、とおもうかもしれないが、エリート本人が納得しているのであればなんの問題もない。
月に100ドル稼ぐ人が200ドル稼げるようになることに比べれば、月に10,000ドル稼ぐ人が11,000ドル稼ぐようになるほうがずっとかんたんだ。そして後者のほうが収入増加額は10倍も多いのである。
組織ってそれでいいとおもうんだけどね。カバーしあえるのが組織の強みでしょう。
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