2023年1月19日木曜日

風呂を満たす物体X

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 お風呂に入るときにさ、たいていこんな恰好で湯船に浸かるでしょ。


 横から見ると、ひらがなの「ん」みたいな恰好。

 よほどでかい風呂が家にあるとか、うちの風呂は昔ながらの五右衛門風呂ですって人以外はたいていこんなポジションをとるとおもう。

 でさ、この図の斜線を引いた部分がお湯を表してるんだから、ここの部分って無駄じゃない?


 お風呂に入る気持ちよさを与えてくれるのは、肌に直接触れている部分だけ。それ以外の部分はあってもなくても関係ない。お風呂のお湯を張るのには水道代も光熱費もかかる。光熱費が高騰している今、無駄な部分のためにお金を払うのはアホらしい。

 だったらなくしてしまえばいい……とおもうのだが、ことはそんなに単純ではない。

 残念ながらお湯は液体だ。そこがお湯のいいところでもあるのだが、欠点でもある。液体は変形しやすい。物質は高いところから低いところに移動するから、「無駄」な部分のお湯を取り除いてしまえば、「無駄じゃない」部分のお湯が「無駄」な部分に移動してしまう。具体的にいえば、肩のまわりのお湯がなくなってしまう。

 これでは、幼いころにおとうさんから言われた「肩までしっかり浸かりなさい」という言いつけが守れない。


 人によっては、水道代や光熱費を節約するために少なめにお湯を張って、まるで湯船の中に寝ころがるようにしながらわずかなお湯を必死に身体にまとわりつかせようとする人もいる。が、これはあまりに惨めだ。人間の尊厳を失いせしめる格好だ。




 そこで、こんなものがあればいいとおもう。


「無駄」な部分を埋める物体Xだ。これがあれば、お湯の量を必要最小限にしつつ、しっかり肩まで浸かることができる。

 ただし、物体Xはなんでもいいわけではない。快適なニュウヨーカー(入浴を楽しむ人)であるためには、Xは以下の条件を満たしている必要がある。

  1. Xは水より比重が重くなくてはならない。軽ければ水上に浮かんでしまい、お湯のかさ上げに使えない。
  2. かといってXが重すぎではいけない。重たいものを脚の上に乗せるのは不快であるし、血行を悪くする。江戸時代の拷問具みたいになってしまう。
  3. Xは自由に変形できなくてはならない。どんな姿勢をとっても、隙間をちょうど満たしてくれなければならない。
  4. Xは肌ざわりが良くなくてはならない。Xが入浴の心地よさを損なっては本末転倒である。
  5. Xは熱伝導性が高くなくてはならない。Xは短時間で風呂の水温に近づかなくてはならない。


 ってことで、ビート版をもっとやわらかくして、もう少し比重を大きくした素材を複数連結したようなやつがいいのではないだろうか。軽くて、ふわふわしていて、水をはじいて、変形が容易なやつ。

 そいつといっしょにお風呂に入れば、少ない湯量で肩まで浸かることできる。地球環境にも優しい。


 ちなみにうちには既にXがある。ぼくはいっしょに風呂に入っている四歳児だ。水よりやや重くて、変形してくれて、肌ざわりがよくて、すぐに温まる。難点は暴れたり水をかけてきたりときたまおしっこをしてしまうことだが、それぐらいのことは地球環境のためならいたしかたない。



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