パーク・ライフ
吉田 修一
『パーク・ライフ』と『flowers』の二篇を収録。
芥川賞受賞作である『パーク・ライフ』は、正直肌に合わなかった。なんだか村上春樹みたいだな、でも村上春樹よりももっと退屈だな、という感想。断片的には悪くないんだけど、シーンとシーンがばらばらで、有機的につながってこない。日記を読んでいるみたいだった。
このくだりとか好きなんだけどね。はっきり言語化するのはむずかしいけど、ああわかるなあという感じで。うちの夫婦も、子どもが寝た後はこんなんだ。仲が悪いわけじゃないよ。嫌なわけじゃないけど、ただしゃべりたくないだけ。
『flowers』は好きだった。これこれ、やっぱり吉田修一作品はこうでなくっちゃ。
ぼくは吉田修一作品の「嫌な感じ」がたまらなく好きだ。怠惰、倦怠感、恨み、諦め、妬み、堕落、逃避、焦燥、自暴自棄……。そんな、誰もが味わいたくない、けれど味わってしまう感情をうまく書いてくれる。
『flowers』には、嫌なやつばかり出てくる。特にクズなのが元旦(こういう名前)で、会社の先輩の奥さんと浮気し、その奥さんを別の男に紹介したりもする。イチモツが大きいのが自慢で、面倒な仕事は要領よく他人に押しつける。……とまあクズ中のクズなのだが、ふしぎと主人公は元旦に悪印象を持っていない(途中までは)。しょうがないやつだとおもいながら、ほんのわずかな憧れを抱いているようにも見える。
そうだよね。どうしようもないけど、でもなぜか憎めないやつっているよね。バカだなあとか、痛い目に遭っても知らんぞ、とかおもいながらも常識やモラルを軽やかに飛び越えて生きている姿にちょっと憧れたりする。
己の中の「他人を傷つけて生きるダメなやつでありたい」という反道徳的な欲求に気づかせてくれる短篇だった。べつに気づきたくなかったけど。
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