2021年12月20日月曜日

M-1グランプリ2021準決勝の感想(12/4執筆、12/20公開)

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 オンライン配信で鑑賞。

 感想自体は準決勝の翌日に書いていたが、ネタバレ禁止とのことだったので決勝終了後まで公開を待っていました。もういいよね?

 以下感想。


滝音 (ダイエット)

 おもしろかった。特に「ブブブブブンブブン」。

 滝音は安定しておもしろいんだけど、その安定感が滝音の弱みでもあるような。ボケがツッコミで笑いを取るためのフリにしかなってないから、加速しながら笑いが増幅していきにないんだよね。

 ボケが強くなったら文句なく決勝だろうな。


ヨネダ2000 (YMCA寿司)

 ほぼ全編音声カットされてたので内容わからず。でも動きだけでもシュールでおもしろそうだった。

 

ニューヨーク (ドラマ)

 演技力を見せつけると言いながら、差別発言を口にしまくるというネタ。

 すっごく好きなんだけど、これが決勝に行けなかったのもよくわかる。テレビではまずいよ、これは。

「昨今はちょっと問題のある発言をすると、たとえそれが芝居の台詞であっても炎上する」を前提知識として持っていれば笑えるけど、そういう人ばかりではないからなあ。

 問題提起で終わるオチはすごく好きだった。


カベポスター (文化祭)

 好きだったフレーズは「道の駅みたい」。

 個人的には好きだけど、コンテストの準決勝にかけるネタとはおもえないほど地味な題材。まあこの地味さこそ彼らの魅力なのでこれはこれでいいけど。


マユリカ (結婚相談所の仲人)

 最初のボケ「パソコンとかないんですか」がピークだったなあ。

 結婚相談所という設定だったら、誰しもが「魅力のない相手ばかり紹介される」を想定するだろうけど、想定通りのボケが続く。はじめは紹介相手ではなく仲人にスポットを当てたボケでおもしろかったんだけど。こっち方面で続けていってほしかった。


ハライチ (ダイエット)

 ウケてなかったなあ。3回戦でもやったネタなので客もほとんど見たことあったんだとおもう。

 最初に見たときもおもったけど、このネタって大麻を扱ってるからチャレンジングなことしてるようで、ネタの構造的にはすごく単純なんだよね。おれたち大麻をネタに入れちゃうんですよ、すごいでしょ、っていう狙いが透けてしまう。

 とはいえ表現力はすごい。そのへんはさすがハライチ。


真空ジェシカ (一日市長)

 好きだったのは「ハンドサイン」「名門のタスキは重い」。

 オーソドックスな漫才コントなんだけど、ボケもツッコミも一発一発が重たい。全部のボケがはずしてなかった。このネタ、台本を読んでもおもしろいだろうな。

 この人たちのネタ、はじめて観たんだけど、これからもまだまだおもしろくなりそう。今これだけウケるんなら、キャラが浸透すればものすごくウケるだろうな。


東京ホテイソン (スマホゲームのガチャ)

 配信の最初に審査員が紹介されてるんだけど、年配の人ばかりなのね。五十前後の。はたしてこの題材、審査員に伝わるんだろうかと心配になった。そして決勝審査員にはもっと伝わらないんじゃないだろうか。

 そしてネタの中身も、単発大喜利の連続で一本のネタとしてのつながりがほとんどなかった。「ゲームのガチャで出てきたのはどんなキャラ?」というお題だから、なんでもアリになっちゃうんだよな。


見取り図 (地元のスター)

 好きだったボケは「飛沫エグい」「ラルフローレンのワクチン」。しかしまだテレビでネタにしていい時期じゃないかも。

 後半怒涛のボケが並ぶので、ああ勝ちにきてるなあと伝わってきた。Mー1に向けて作ってきたネタだなあ。

 おもしろかったとはいえ去年までの見取り図と比べて飛躍的に良くなったかというと、うーん……。でも、準決勝の審査員はそんなこと気にせず、「このメンバーの上位9組に入ってるか」だけで選んでほしいな。だったら入ってるでしょ。


ゆにばーす (ディベート)

 登場するなり拍手で盛り上げてからツカミ、は見事。一気に会場をつかんだ。

 個人的には好きなネタじゃなかった。根本のテーマが古いんだよね。こいつは女として見れないとか男としてアリどか、百年前から男女コンビがやってたようなテーマなので。古さをひっくり返すような展開があればよかったけど、古いままで終わってしまった。


ロングコートダディ (天界)

「ワニになりたい」で兎さん(ややこしいけど芸名)のほうがボケとおもわせておいて、まさかの堂前さんがボケというパターン。いや、ツッコミはいないからふたりともボケか。

 シンプルな漫才コント。ロングコートダディは好きなんだけど、個人的には昨年の「棚を組み立てる」ネタの方がずっと好きだった。漫才としての完成度も高いし、他にいないタイプのネタだし。


男性ブランコ (焼肉屋)

「メニュー名うるせえ」がおもしろかった。あと、いろいろやった後のシンプルな「生レバー」と。

 おもしろいボケはいくつもあるけど笑いどころが多くないので、しゃべり中心の漫才に対抗するのはむずかしいよな。コントに専念してもいいんじゃないかな。


アインシュタイン (宇宙からのお迎え)

 そんなにウケてなかったけど、個人的には今まで見たアインシュタインのネタの中ではいちばん良かったな。身の周りの題材ではなく、これぐらいぶっとんだシチュエーションのほうがアインシュタインには向いてるんじゃないかとおもう。和牛は逆に身近な題材を扱うようになってよくなったけど。


もも (決めごと)

 いつもの「なんでやねん、○○顔やろが」パターン。基本的には見た目とのギャップとあるあるネタなので何本か見ると飽きてしまう。わかりやすいし、はじめて観る人にはウケるだろうけど。

 しかしうまいというか、うますぎるというか。練習の痕が見えてしまうなあ。

「このパターンだけで大丈夫か」と余計な心配をしてしまうが、ハライチや東京ホテイソンのようにいったんワンスタイルで顔と名前を売ってからいろんなパターンに挑戦するのが売れるための早道なんだろうね。


オズワルド (友だちがほしい)

 いやあ、よかった。好きなフレーズは「お気に入りのズボン」「足の遅い友だち」など。

 準決勝観て「これはまちがいなく決勝行ったな」とおもわせてくれたのはオズワルドだけでした。非の打ち所がない。

 ツッコミのセンスはそのままに、ボケの狂気性がパワーアップ。これぐらい狂気みなぎるボケなら、かなり強めのツッコミでもバランスが取れるよね。優勝候補筆頭でしょう、これは。


ランジャタイ (高校最後のバスケの試合)

 著作権の事情で半分ぐらい音声カットされてたけど、だいたい何をやってるかがわかるのがランジャタイのすごさ。

 しかし、準決勝の客だから大ウケただけで、初見の客の前ではここまでウケないだろうという気もする。

 まあここは決勝に上がった時点で勝ちだよね。半端に五位とかにならずにぜひ最下位をとってほしい。


金属バット (スーパーのカート)

 金属バットにしちゃあ毒っ気が少なかったな。

 というのは、個人的な話で申し訳ないけど、ぼくが住んでるところは民度が低いのでスーパーのカートを持って帰るババアがいっぱい生息してるんだよね。だから「カートは無料」のボケが笑えなかった。実践してるやつがたくさんいるんだもん。

 どや顔の「もうええわ」は、準決勝イチ笑った。しかしあれは金属バットを知ってるから笑えるだけだな。


ダイタク (葬式)

 良かった点は「アメリカの未亡人スタイル」。

 他はだいたい「双子が葬式を題材にしたネタを作ったら」の想像の範囲内。


からし蓮根 (先輩刑事と後輩刑事)

「キッザニア」「人間の外来種」あたりがおもしろかった。

 あとは特に印象に残らず。


インディアンス (怖い動画)

 アンタッチャブルのコピーとよく言われるけど、このネタはノンスタイルみたいだったな。

 前説みたいな漫才だった。笑わせるというより盛り上げる漫才。今年も決勝トップバッターやってほしい。


ヘンダーソン (街コン)

 なかなか漫才中のコントに入らない……というネタ。これは完全に漫才を題材にしたコントだな。

 ちょっと台本に表現力がついていってなかったかなあ。


キュウ (境目をとっつかまえる)

 漫才で遊んでる。漫才の枠組みで何ができるかを実験してるようだった。この人たちのネタは「いかにすごいとおもわせるか」「いかに客の想像を裏切るか」が強すぎて、肝心の「いかに笑わせるか」がおろそかになっているようにおもう。


アルコ&ピース (鳥になりたい)

 アルコ&ピースらしいメタ視点のネタ。

 ウケてたけど、準決勝の客向けのネタだったなあ。他のコンビを引き合いに出してるので、これが決勝1組目だったら成立しない。

 ヘンダーソンと同じく完全にコントだけど、こういうネタってキングオブコントでは評価されないのかね。


錦鯉 (合コン)

 ボケのばかばかしさは昨年通りだが、ツッコミにスピード感が。渡辺さんに自信がみなぎっている。

 大会に向けて作りこんできたなー。

 個人的には、錦鯉にはあんまり「M-1で勝ちやすい」タイプのネタをやってほしくないな。彼らはおじさんであることが最大の強みなんだから。博多華丸大吉みたいに、おじさんにしかできない漫才をやってほしい。


モグライダー (さそり座の女)

 ほぼ全篇音声カットだったのでよくわからず。たぶん3回戦の玉置浩二のネタとほぼ同じ構成かな?


さや香 (かけ算は必要ない)

 序盤から熱量がありすぎた。余裕がなさすぎて見ていてしんどい。ギアを上げる場所はそこじゃないだろう。

 笑わせようとしてるんじゃなくて、勝とうとしているように見える。客よりも審査員を見ているというか。

 最近のさや香を見ていると、晩年のハリガネロックを思いだす。若くしてM-1グランプリで高評価をされてしまったがために、その後M-1にふりまわされて自分たちの漫才を見失ってしまったコンビ。ハリガネロックもボケとツッコミを入れ替えたりしてたなあ。

 ハリガネロックは解散してしまったけど、同じ道をたどらないことを願う。




 去年もおもったけど、準決勝の配信は決勝放送後にしてくれたらいいのに。

 準決勝で落ちた組がどんなネタをやったのかは観たいけど、決勝進出組のネタは当日まで楽しみにしておきたいから。

 去年、マヂカルラブリー以外のコンビは準決勝のネタを決勝一本目で披露した。多少のアレンジは加えていたけど。
 今年もほとんどの組がいちばん自信のあるネタ(準決勝のネタ)を決勝一本目に持ってくるだろうから、先に準決勝を見てしまうと決勝のおもしろさが目減りしてしまうんだよね。

 だから準決勝の配信は、決勝放送後にしてくれたらいいのになー。ネタバレも気にしなくていいし。




 今年の決勝進出組は、

  • 真空ジェシカ
  • ゆにばーす
  • ロングコートダディ
  • もも
  • オズワルド
  • ランジャタイ
  • インディアンス
  • 錦鯉
  • モグライダー
  • (敗者復活組)

 去年もそうだったけど、準決勝の出番順前半の組は極端に進出率が低い。去年は8組目のマヂカルラブリーまで合格者なし、今年も7組目の真空ジェシカまで合格者なし。だいたい3分の1ぐらいが合格してるのに、明らかに前半組の分が悪い。

 決勝は独特の空気もあるからしかたないけど、準決勝はもうちょっと冷静に審査してあげてほしいなあ。運も実力のうちとはいえ。


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