白いへび眠る島
三浦 しをん
ファンタジーというかホラーというか。青春小説でもある。
生まれ故郷の小島に帰省した高校生の主人公。怪物が出る、といううわさを耳にして不吉な予感をおぼえる……。
という導入。島に伝わる伝説になぞらえた殺人事件でも起こるのかな、とおもいながら読んでいたら、ほんとに怪物が出る。
あっ、そういう話ね。
持念兄弟、神としてまつられる白蛇、うろこを持つ一族、ふしぎなものが見える少年、とけれん味の強い設定がたっぷり。
設定が語られ、徐々に不吉な予感が高まり、怪異現象が島を襲い、主人公が友情に支えられながら島を救う……というストーリー。
なんというか、順当すぎて拍子抜けしてしまった。
いや、悪いわけではなかったんだけど、定番のストーリーを素直に楽しむにはぼくがすれすぎてしまったというか……。
中学生ぐらいで読んでいたらまた楽しめたんだろうけど。
ストーリーにそんなにひねりがないところも含めて、民話っぽい雰囲気はよく出ている。
神話とか民間伝承ってそんなに意外性のあるストーリー展開じゃないもんね。
意外な正体もどんでん返しもない。正義が負けることもないし悪は封じこめられる(滅びるわけではない)。
だからこれはこれでいいのかもしれない。
ところで、離島に起る怪異現象、ということで堀尾省太 『ゴールデンゴールド』という漫画を思いだした。
『ゴールデンゴールド』も神様の出現により島中がじんわりと破滅に向かっていく話ではあるんだけど、 『ゴールデンゴールド』は神様が直接手を下さずに人間の欲を利用していさかいを起こさせる。
狭い島の住人たちの様々な思惑が衝突しながらじわじわと人間関係が壊されていく。
ぼくにとってはこっちのほうがずっと怖い。
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