『ゴールデンゴールド』
堀尾 省太
人から『ゴールデンカムイ』って漫画がおもしろいよ、と勧められてAmazonで検索窓に「ゴールデン」と打ちこんだら候補に「ゴールデンゴールド」が表示されてうっかりクリックしてしまい、でもこっちも評価高いなー、あらすじも怖そうでいいなーということで半ば偶然のような出会いで購入。
小さな島に住む少女が偶然拾った人形に願い事(「島にアニメイトができますように」)をすると、徐々に島が発展しはじめる。人形の存在を知る者は豊かになっていくが、それにあわせるように少しずつ性格が変わってゆく。
また、裕福になるものとそうでない者との間に対立が深まり、島は二分されてゆく――。
ってな感じが2巻までのあらすじ。ここから先どう展開していくのかは読めない。
じわじわと足元が崩れていくような恐怖に引きこまれてしまう。
こういうじんわりとした恐怖って漫画向きだよね。説明過多にならずに変貌を描けるから。
”フクノカミ” がいい存在なのか悪いものなのかは、今のところ明らかではない。まあいいやつではないだろうけど。
”フクノカミ” が直接何かをするということはない。周囲の人間にはたらきかけて、その人が本来持っていた欲望を引き出すだけ(2巻の後半では間接的に手を下してたけど)。
手垢にまみれた表現だけど、生身の人間がいちばん怖い、ってやつだね。
それにしても細部の描写がうまい。
狭い島での人間関係とか(「そらいけんよのう。世の中法律だけで回っとるんじゃないんじゃけえ」という言い回しの絶妙さよ!)、田舎の半端なヤクザの造詣とか、中学生同士の恋愛とも呼べないような恋模様とか、島の産物とか、細部のリアリティが不思議な力を持つ ”フクノカミ” の異質さを際立たせてくれている。
設定が突飛であるほど舞台や人物造詣はリアリティが必要だよね。『寄生獣』なんかはそのへんに成功してたから傑作と呼ばれるわけだし、名前を書くと人が死ぬノートを拾う人物が頭脳明晰・容姿端麗・冷血無慈悲な正義感の塊で警察幹部の息子では奇天烈ハチャメチャコント漫画になってしまう。
こういうサイコホラー的な漫画って終盤はエスカレートしすぎて現実味がまったくなくなってがっかりさせられることが多いんだけど(どの作品とは言わんけど)、この現実感の絶妙なバランスを保ったままストーリーがうまく着地してくれることを願う。
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