2019年5月9日木曜日

マンション住民会における老人のふるまい

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マンションの住民会というのに出席した。

役員紹介、昨年度の住民会の取り組みの報告、昨年度の収支報告。
一切波風の立たない退屈な進行。
ぼくは、もらった資料の余白に「ごんべんの漢字」を思いつくだけ書いて時間をつぶしていた。

問題が起こったのは、今年度の予算報告のときだ。
会計担当のじいさんが予算報告をすると、窓際に座っていたじいさんが異議を申し立てた。

親睦費に対してお金を使いすぎじゃないかという内容だ。

「毎年この金額でやっておりますので……」と会計じいさんが答えると、窓際じいさんが「毎年予算オーバーしてるんだから見直すべきでしょう」とつっこむ。

「ではこの点については検討します」と会計じいさんが逃げようとすると、窓際じいさんが「それを検討するのがこの場でしょう」と追い詰める。

なかなかスリリングな攻防だ。
他の出席者も「予算見直したほうがいいんじゃないでしょうか」などと言い、窓際じいさんが優勢だ。

ぼくはにやにやしながら眺めている。
親睦日の内訳を見ると「親睦旅行等」と書いてある。
要するに住民会の役員を中心とする老人たちが会費で旅行に行ってるんだろう。
あまり感心したことではないが、みんなやりたがらない役員をやってくれているのだからそれぐらいの役得があってもいいんじゃないか、ともおもう。
つまり「どっちでもいい」。

しかしジジイ同士の口論はなかなか見られるものではない。
こっそり机の下でスマホを取りだし、家にいる妻に「やべー。めっちゃ紛糾しとる」とLINEを送った。笑顔の絵文字入りで。

十分ほどの闘いは、窓際じいさんの勝利に終わった。
会計じいさんは来年度予算を修正することに合意し、後日訂正した資料を配布することを約束させられた。

だが窓際じいさんは満足しなかった。
再び手を挙げて「祭事費用についてなんですが、これについても予算をオーバーしておりますが……」と言いだした。

うへえ。
会計じいさんはもちろん、その場にいた全員が「もういいぜ」という気分になった。
さっきまでは窓際じいさんの見方についていたのに「まだやんのかよ」「ちょっとぐらいの超過はいいだろ」という空気になった。
露骨にためいきをついたり時計を見たりする人もいるが、窓際じいさんは気にも留めない。
やべえ、会計のごまかしを見抜くスーパー監査じいさんかとおもっていたら、単にケチをつけたいだけのクレーマーじいさんだった。



住民会の間、もうひとつ気になったことがある。

ばあさんたちがずっとおしゃべりをしているのだ。

びっくりした。
住民会がはじまるまでの間しゃべっていて、会長のじいさんが「ただいまより住民会をはじめます」と宣言している間もずっとしゃべっていて、活動報告や収支報告をしている間もずっとしゃべっている。
しかも一切ボリュームを落とさず。

「人が前に出てしゃべっているから静かにしよう」という意識が微塵もない。
一度しゃべりだしたら止まれないのかとおもうぐらいしゃべりつづけている。

ごんべんの漢字をおもいつくかぎり書いていたぼくですら、「人が前に出てしゃべっている間は静かにする」という最低限のルールは守っていた。
五歳の娘を連れていったのだが、五歳児ですら静かにえほんを読んでいた。ぼくに話しかけるときは声をひそめていた。
保育園児ですらできることなのに、このババアたちには「人が前に出てしゃべっている間は静かにする」ができないのだ。

呆れるのをとおりこして感心した。
すげえな。
このばあさんたち、義務教育受けてないのか? 人が話している間は静かにしようって尋常小学校で教わらなかった? それとも寺子屋?

加齢とともに体力と常識が落ちたのか、耳が遠いのか、声のボリューム調整機能がぶっこわれたのか、それともそのすべてなのかしらないけど、とにかくすげえな。


で、前に立って報告しているじいさんのほうもおかまいなしなのね。
自分が報告している間、ずっとボリューム大でババアが鳴っているのに、いっこうに気にしないの。
怒鳴るまではしなくても、にらみつけるとか静まるのを待つとか一切なく、ずっと話している。

加齢ってすごいな。何も気にならなくなるのかな。



そういえば、母が昔町内会の役員をやっていたのだが
「町内会のじいさまたちはなかなかのものよ」
と語っていた。

なんでも、町内会長などをやりたがるじいさんたちは権威欲も強いので、まず人の話を聞かないし、すぐにじいさん同士でぶつかるそうだ。

そして口論になると、最終的には
「私は〇〇社の経理部長をやっていたからわかるんだが……」とか
「〇〇さんは高卒だから」
とか言いだすのだという。七十歳を過ぎたじいさんたちが。

ひゃあ、それは相当な地獄絵図だなあ。


近くにいないと「お年寄りを大切に」なんて言えるけど、いざ関わってみるととてもそういう気分にはなれないなあ。


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