2019年5月23日木曜日

ゲスい飲み会

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前いた会社は若い営業社員が多く、体育会系のノリだった。

ある飲み会のとき、男性社員数人が新しく入った美人社員をつかまえて
「この会社の男の中で誰がいちばんタイプ?」
と訊いていた。

ぼくは少し離れた席でそれを聞いていて「美人もたいへんだな」とおもっていた。

先輩社員に対して「それセクハラですよ」とはなかなか言えないだろう。

適当に受けながしても、この手の質問をするやつは相手の気持ちなんて考えないから答えるまでしつこく訊くだろう。

「みんないい人なんで全員です」なんて返事では済ませてもらえないだろう。

かといって適当に誰かの名前を挙げて、本気にされても困るだろう。仕事もやりづらくなるだろう。


すると美人は言った。
「犬犬さん(ぼくのこと)です」と。

なるほどな、とぼくは感心した。

ぼくは、その会社ではめずらしい既婚者だった。
既婚者、しかも別部署で仕事上の接点がほとんどない人の名前をあげておけば、本気にされる可能性も低い。
もともと仕事上のつきあいもないから、万が一気まずくなっても大丈夫。

さすがは美人。
しょうもない質問をかわしなれてるなあ、と感心した。

と同時に、こうもおもった。

逃げ口上に使われただけとわかってはいても、おっさんはちょっとドキドキしちゃうんだからな!




またべつの飲み会のとき、男性社員三人が女性のSさんをつかまえてこんな質問をした。

「この三人の中でつきあうとしたら誰がいい?」
(ゲスな会話ばっかりしてるとおもわれるかもしれないが、じっさいゲスいやつばっかりの会社だったのだ)

すると、Sさんはこう答えた。
「んー。顔だけでいったら〇〇さんかなー。でもつきあって楽しそうなのは××さん。結婚するなら△△さんかな」

おお。
三人ともにいやな気をさせない返事。と同時に三人とも恋愛対象ではありませんよと伝えている。うまい。
さすがは営業成績トップのSさんだ。

はぐらかされた三人は、気を良くしたような、少しがっかりしたような、なんとも言えない顔をしている。
完全にSさんが上手だったな。


三人は懲りずに、横にいたべつの女性Nさんに同じ質問をした。
「この三人の中でつきあうとしたら誰がいい?」

するとNさんは間髪を入れずに答えた。
全員イヤです

男「えっ、いや、じゃあ地球上にこの三人しか男がいないとしたら?」

Nさん「そのときは誰ともつきあわずに死んでいきます


お、おとこまえー!

隣で聞いていたぼくが、Nさんに惚れそうになってしまった。


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