市橋 伯一
生命と非生命を分けるものは何か、生命を生命たらしめてるのは何か。細菌、単細胞生物から植物・動物へと進化してゆく過程を追いかけながら考える。
結論を先に書いてしまうけど、そのカギを握るのは「協力関係」だと著者は語る。
たとえば細菌がより複雑な真核細胞に進化したきっかけは、細胞壁を失った細菌が別の細菌を体内に取り込んだこと。それによって細菌同士の協力関係が生まれた。取り込んだ細菌にしたら、体内の細菌がエネルギーを作ってくれるし、取り込まれた側の細菌からすると安全に生きていける環境を手に入れたことになる。この取り込まれた側の細菌が、ミトコンドリアや葉緑体となった。そうかー。ぼくの体内でも別の生きものであるミトコンドリアががんばってくれてるのかー。
そして生物は複雑化するにつれ、より高度な協力関係を結ぶようになった。いや、その逆で、高度な協力をするようになったことで複雑化できたのかもしれない。
動物たちは個体間で協力をするようになった。サルやアリやハチは群れをつくり、お互いに助けあって生きている。
だが群れをつくる動物でも、協力するのは基本的に血のつながった家族だけだ。血縁のないまったくの他人とも協力して、助け合うのはヒトだけだ。他の動物は「助ける」はしても「助け合う」はしない。「この前助けてもらったから今度はこっちの番だよ」はヒトだけの行動なのだ。
助け合いは、共感能力や記憶力が高いヒトだからこそできるのだ。
「人間は残酷だ」「捕食や生殖以外の目的で殺し合うのは人間だけだ」と、人間の残酷性がことさらに強調される。ある点では真実だが、深い協力関係を築けるのも人間だけなのだ。
近代社会にとって納税は「人間を社会につなぎとめるためのもっとも重要な行為」である。
……のわりには、みんなずいぶん脱税に甘い気がする。
やれ誰それが不倫をしたとか騒ぐけど、不倫の被害者は数人。脱税の被害者は一億人。どっちが重要か比べるまでもない。「公共財を利用して生きる価値なし」と判定されてもおかしくないぐらいの重要だとおもうけどね。
脱税や政治資金規正法違反って国家の存在を揺るがすという点ではほとんどテロでしょ。もっと厳しくしてもいいとおもうけどね。
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