どの作品だったかは忘れたが、主人公であることの描写として
「身長は日本人の平均、体重も平均、つまり典型的な中肉中背」
という一文を見かけた。
一見なんのへんてつもない文章だが、実はこれは正しくない。
身長と体重が平均と同じであれば、中肉中背にはならない。
例として、3つの図形を考えている。
1辺の長さが1の立方体、1辺の長さが2の立方体、1辺の長さが3の立方体だ。
どれも同じ材質でできているものとする。
これら3つはどれも立方体なのだから互いに相似形、つまり同じ形だ。人間でいうと「スタイルがまったく同じ」ということになる。
この3つの図形の身長はそれぞれ、1、2、3だ。
一方質量はというと、Aの質量を1とすると、Bは8、Cは27となる。
平均をとってみよう。
身長は (1+2+3)/3=2
体重は (1+8+27)/3=12
平均身長は2。平均体重は12。この両方を満たす図形は、さっきの3つの図形より明らかに太い。Bと同じ身長なのに体重は1.5倍もあるのだから。
つまり、まったく同じ材質・同じ形であれば体重は身長の3乗に比例するわけだ。
もっとも、人間の身体はそう単純ではない。身長が伸びたからといってそれに比例して頭蓋骨や歯まで大きくなるわけではないし、体重が増えるほどそれを支えるための骨や筋肉も増えるので密度は高くなる。だから同じスタイルをキープしたとしても、身長の3乗に比例するわけではない。
身長100cm、体重15kgの子どもはごく平均的だが、身長200cmで体重120kg(15kg×2^3)はちょっと太っている。とはいえ200cmもあるのだからそこまでのデブでもない。まあだいたい3乗に比例すると考えてもよさそうだ。
ということで、平均身長・平均体重の人は平均よりも太っている。
ちなみに、肥満度を示すBMIの計算式では、体重(kg)を身長(m)の2乗で割っている。
なんで2乗なんだ、3乗じゃないのか、とおもうかもしれないが(ぼくもおもった)、肥満かどうかを考えるときには体表面積が重要らしい。体重に対して体表面積が小さいと十分に放熱ができないのでよくない、ってことみたい。
だから200cmの人の理想体重は120kgじゃないのね。
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