死にかけたこと1
十歳のとき、同い年のいとこと川で遊んでいた。
ぼくは泳げたので「深いほうに行ってみようぜ」といとこを誘った。いとこは「よし行こう。おもしろそうだな」と言ってついてきたが、いきなり溺れた。
後で知ったのだが、泳げないくせに見栄を張ってついてきたらしい。
ぼくはいとこを助けようと腕をつかもうとしたが、パニックになったいとこはぼくの腰にしがみついてきた。
おいなにすんねんこいつ。助けようとしてやってんのに、腰をつかまれたらこっちも溺れるだろ。
溺れるならひとりで溺れろよ。勝手に人を巻きこむな。やばい、川底に引きずりこまれる。
一瞬死が脳裏によぎった。ぼくはいとこを蹴とばしてその手をふりほどき、浅瀬まで泳ぎついた。
ただならぬ様子に気づいた父と伯父が助けに向かい、いとこは無事救出された。
教訓:救助訓練を受けていないなら、溺れるやつは放っておけ
死にかけたこと2
小学六年生のとき。
近所の銀行の裏の壁にはしごがあった。はしごがあればのぼりたくなるのが男子。
はしごを伝って銀行の屋上にのぼって遊んでいた。
三階分くらいの高さがあったので、手をすべらせたりしたら軽いけがでは済まなかっただろう。
当時は大したこととおもっていなかった(びびっていると思われないようになんでもないふりをしていた)が、今考えるとぞっとする。
教訓:男子の手の届くところにはしごを置くな
殺しかけたこと
中学生のとき。
同じクラスのやんちゃ者、オオガキが窓枠に腰をかけていた。校舎の三階。もちろん落ちたらただではすまないが、彼は強がってわざと危険なことをしていたのだ。男子とはそういうものだ。
ぼくはそれを見て、くだらねえことしてるなと思いつつ、ちょっとびびらせてやれと思って「わっ」と言いながらオオガキを軽く押した。
するとぼくの想像していたよりもはるかにオオガキはバランスを崩し、「ヤバい」という顔をして必死に窓枠にしがみつき、すんでのところで体勢を立てなおした。
オオガキもあわてていたが、ぼくもめちゃくちゃびびった。その一瞬、世界がスローモーションになるのを感じた。
「……あ、あぶなかったなー!」
ぼくらは顔を見合わせて安堵のためいきをついた。あとほんのちょっとバランスを崩していたら、彼は死者、ぼくは殺人者になるところだった。
もう二度とこんな悪ふざけはやるまいと固く心に誓った。
今でもあの瞬間のことを思い返すとドキドキする。彼がバランスを立て直してくれてほんとによかった。あそこでオオガキが転落していたらぼくは今とはまったく違う人生を送っていただろう。
教訓:命にかかわる冗談はぜったいにやっちゃいかん
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