貧乏クジ世代
この時代に生まれて損をした!?
香山 リカ
この本でとりあげられる「貧乏クジ世代」とは、いわゆる第二次ベビーブーマーであり、いわゆる団塊ジュニア世代であり、いわゆるロストジェネレーション世代である。
1970年代生まれ、だいたい中高生ぐらいにバブルを経験している時期。「大人たちがバブルに浮かれているのは見ていたけど、自分たちが社会に出たときにはバブルははじけていてその恩恵にあずかれなかった世代」だ。
その世代について分析した本……かと思いきや。
いやあ、ひどい本だった。
ぼくもいろんなひどい本を読んできたという自負があるけど(どんな自負だ)、この本は相当上位にランクインするな。
なにしろ「こんな話を聞いた」とか「私の周りにこんな人がいる」とか「私はこうだった」レベルの話がひたすら並び、それをもとに世代論を展開している。
は?
言っておくが、この文章の前後のどこにも「70年代生まれはオカルトにはまりやすい」ことを示すデータはない。ないのはあたりまえだ。著者の頭の中にしかない思いつきなんだから。
だいたい70年代にオカルトへの関心が高まったんなら、オカルトにはまってたのは70年代生まれじゃなくてその上の世代じゃねえか。乳幼児がオカルトブームを牽引してたと思ってんのか?
著者の頭の中がいちばんの “超越志向” だよ。
これもひどい。ツッコミどころしかない。
「私の時代」ってなんなんだよ。それ言っていいのは天皇だけだよ。
「その世代向けに書かれた本」ってどうやって判断したんだよ。
「ように見える」「あるようだ」「ありそうだ」って大学生が論文に書いてまず怒られるやつだよ。Wikipediaなら[要出典][未検証]とかタグつけられまくるやつだよ。
「大きな事件や戦争が次々に起きる」「本の多くが~」も根拠ゼロ。「最近の若者はなっとらん」レベルの意見。
「自分の観測範囲内の人たち+根拠のない推測」と「私が三十歳だったころ+美化された思い出」を比較して、「この世代は~」と語っている。あきれて話にならない。
また、この「この根拠ゼロの分析」の後に、「精神科医からのアドバイス」みたいなのがくっついていて、余計に不愉快。
著者の妄想でしかない症状に対して、対策を教えられてもねえ。
この根拠ゼロ+クソつまらない話が延々続いて、この前置きはいつまで続くのかとおもっていたら、とうとう中盤までこの調子だった(半分ほどで読むのをやめたので最後がどうだったかは知らない)。
ぼくは「よほどのことがないかぎりは一度読みはじめた本は最後まで読む」ことを心がけているので途中で投げだすのは五百冊に一冊ぐらいなのだが、これはその貴重な本の一冊に見事光り輝いた。
エッセイとしてならまだしも、これを新書として出すなよ……とため息が出る。ここまでひどいと、もう著者に対しての怒りは湧いてこない。どうしようもない人なのだから。
これをノーチェックで出版した出版社に怒りが湧いてくる。
この本の刊行は2005年。そういやその頃って新書ブームとか言われて質の低い新書が濫造されていた時期だったなあ……。新書貧乏クジ世代だ。
いやあ、ほんとひどい本だった。この人の本は二度と読まんぞ!
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