2019年2月26日火曜日
不公平な姉弟
ぼくの姉には子どもがふたりいる。
八歳の姉と四歳の弟。きょうだいでありながら性格はぜんぜんちがう。一言でいうと、お姉ちゃんは神経質、弟はおおらか。
お姉ちゃんは弟に厳しい。自分と同じものを求める。
大人からすると八歳と四歳なんてまったく違うのだから、何をするにも弟はできなくて当然。だけどお姉ちゃんはそれが許せない。
「なんでわたしはできないと怒られるのに弟は許されるのよ!」という不満を抱えて生きている(ように見える)。
こないだその姉弟とすごろくをした。
やはりお姉ちゃんは弟に厳しい。
「待ってるんだから早くサイコロ振って!」「4が出たんだからそこじゃないでしょ!」と弟を叱責する。
さらに間の悪いことに、弟はいい目が出てお姉ちゃんは悪いマスにばかり止まる。
弟はトップ、お姉ちゃんはビリ。すごろくは運ですべてが決まるのでこればっかりはどうしようもない。
お姉ちゃん、だんだんイライラしてきて、露骨に弟に当たりちらしはじめた。
サイコロを弟に投げつけるように渡したり、弟のコマをわざと倒したり。
しかし弟のほうは、姉が自分に向けてくる悪意にまるで気づかない様子で、いつもと同じようににこにこしながら「やったー、6だー!」と喜んだり「お姉ちゃんがんばれー!」と応援したり(しかしそれがお姉ちゃんには煽っているように感じるのだが)。
もしこれが、悪意に気づきながら華麗にスルーしているのだとしたら相当な大物だ。
さてさて。
当然ながらその場にいる大人は、弟に気を遣う。
お姉ちゃんに「もっと優しくサイコロを渡しなよ」と注意をし、弟に「ゆっくりでいいからね」と声をかける。親も、おじいちゃんおばあちゃんも、叔父(ぼく)も、弟に気づかう。
その結果、お姉ちゃんはますます不機嫌になる。
きっとお姉ちゃんからしたら「弟がやるべきことをできてないから注意してやってんのに、周りの大人は弟ばかり甘やかす」というふうに映っているのだろう。
弟に厳しく当たる → 周囲の大人が弟に優しくする → ますますイライラして弟に厳しく接する
というスパイラルだ。
しかしお姉ちゃんは、自分の行動が「弟甘やかされすぎ」現象を生んでいるとも知らず、今日も弟に冷たくあたる。
つくづく損な性格してるなーと傍から見ていて思う。
子どもは、不公平であることに異常に敏感だ。
いつも周りと見比べて、自分が享受すべき利益が他人に渡っていないかを厳しくチェックしている。
「よそはよそ、うちはうち!」
と言われずに育った子どもはまずいないだろう。
世の中は不公平なものだが、それを認めるには時間がかかる。
世界は不公平だと学ばぬまま大人になってしまっている人も多い。
「おれをスピード違反で捕まえるんだったら他のやつも捕まえなきゃだめだろ!」
「私は努力してるのになんで大した努力もしてないあいつがいい目にあってるのよ!」
と考えてしまうタイプは一生幸せになれない。
完全に公平であってほしいという気持ちを満たそうと思うなら、誰もが不幸な国に行くしかないのだから。
かわいい姪にはそんな不幸な大人になってほしくないと思うので、
「弟に優しいお姉ちゃんって思われたら、みんなが優しくしてくれるよ」
と言ってみたのだが、はたしてどこまで伝わっているのやら。
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