ときどき母と本の交換をする。「これ、おもしろかったよ」と自分が読んだ本を交換するのだ。
母はミステリやサスペンスが好きなので、こないだ清水潔『殺人犯はそこにいる』を贈った。
「ノンフィクションだけど、そこらのミステリ小説よりずっと手に汗握る展開だった」と。
一ヶ月後、母に尋ねた。
「『殺人犯はそこにいる』、読んだ? すごい本やったやろ?」
すると母は「途中で読むのやめちゃった」と言う。
「えー!? なんで? あの本を途中でやめられる? ぼくは中盤から一気に読んだけどな」
「いや、ノンフィクションとしてはすごくいい本だと思う。
でも、孫ができてから、ちっちゃい子がひどい目に遭う話は読めなくなったのよね。
うちの孫がこんな目に遭ったらと思うとつらすぎて……」
と。
母の変わりように驚いてしまった。
あんなにサスペンスやホラーが好きだった母が。学生時代から『雨月物語』を愛読し、猟奇的な殺人事件もののミステリばかり読んでいた母が。
人間、歳をとると変わるんだねえ。
しかしなによりショックだったのは、「孫ができてからちっちゃい子がひどい目に遭う話はつらすぎて読めない」と言う母が、ぼくが子どものときはそんなことを一言も言っておらず、残虐な物語もよく読んでいたこと。
我が子はええんかい。
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