2018年2月16日金曜日

捏造記憶

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ぼくのいちばん古い記憶は、「二歳の誕生日を家族に祝ってもらっている」というものだ。

「バースデーケーキを前にして、両親や姉がぼくの誕生日を祝っている」という映像が自分史上最古のものだが、この映像の中にぼくの姿もある。

おかしい。自分の記憶なのに、自分の姿がある。幽体離脱をして外から自分の姿を見ていたのだろうか。

これは、もっと大きくなって見せられた写真をもとに、捏造した記憶だろう。



「二歳のときに入院していた」という記憶もある。

これは事実だ。姉と自転車の二人乗りをしていて、転んで左ひじの骨を折ったのだ。

入院中のあるとき、赤い飴玉を渡された。飴玉をなめていると、それが睡眠薬だったらしく、眠りに落ちてしまった。目が覚めたら手術が終わっていた。


……とずっと思っていたのだが、あるとき母にその話をしたら「そんなわけないじゃない」と言われた。

たしかに二歳の子どもに睡眠薬を飲ませるなんてあぶない。ふつうは全身麻酔をするだろう。また飴玉を睡眠薬にしたら、寝たときにのどに詰まる危険性がある。

よく考えたらいろいろとおかしい。

しかしこれは写真もないし、どこから「赤い飴玉の睡眠薬」という発想が出てきたのか、謎だ。

しかし最近、『ひとまねこざるびょういんへいく』という絵本を見ていると、おさるのジョージが病院で赤い薬をなめて寝てしまうというシーンがあった。

この本、うちにもあった。母に訊くと「あんたが入院していたときに買ったのよ」とのことだった。

なるほど、これだったのか。どうやらおさるの記憶と自分の記憶がごっちゃになっていたらしい。



自分の記憶って、けっこうあてにならないもんだな。

二歳のときだから、ってのもあるけど、もしかしたら二十歳ぐらいの記憶も半分くらい後から捏造しているかもしれない。


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