2018年2月6日火曜日

嫌いな歌がなくなった世界

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『あたし、おかあさんだから』という歌が話題になっている。というか炎上している。

キャリコネニュース:「あたし、おかあさんだから」の歌詞、母親の自己犠牲を美化し過ぎと炎上 作詞者は「ママおつかれさまの応援歌」と釈明

知らない人のためにかんたんに説明すると
「母親目線の歌をつくった人に対して、いろんな人が気に入らねえなと怒ってる」
という状況です。


歌は聞いてないけど歌詞を見て、これは反発買うだろうな、と思った。
でもこれに感動する人もいるだろうな、とも思う。

だからべつにいいじゃない。嫌いな人は嫌ったらいいし、歌いたい人は歌ったらいい。
だって歌だし。教科書じゃないし。こうありなさいと強要してきてるわけじゃないし。

この歌を爆音で流した街宣車が毎朝六時半に走りまわって「みなさんもこういうふうに生きましょう」って言いまわっていたら「うるせーやめろよ!」って叫ぶけど(どんな歌でもイヤだわ)、どうやらそういう事例は報告されていないらしい。だったらべつにかまわない。

こういうのを許せない人って生まれてこのかた一冊も文芸書を読んだことないのかな。
小説やエッセイを数冊読んだら発狂するだろうな。あまりに理不尽な価値観だらけだから。読んでいて嫌な気持ちになる本なんかいっぱいあるから。だからおもしろいのに。



作者に対して「こんな歌つくるな」とか「だいすけおにいさんに歌わせるな」とか言ってる人がいる。
作詞者のTwitterアカウントに「こんな歌つくらないでください」と言いにいったり。

すげー怖い。

なんなの。気に入らないもの皆殺しにしないと気が済まない人たちなの。ゴキブリが嫌いだからって人里離れた山の中に住んでるゴキブリまで全滅させなくちゃ気が済まない人たちなの。こえーよ。


「私この歌嫌い」と「作るな、歌うな、流すな」が地続きになってる人ってけっこういるらしい。
「母親に対する呪いの歌だから歌うな」こんな幼稚な言説が大手を振ってまかりとおっていることにむずむずする。

いいじゃない、呪いだとしても。モテない男がヤリチンを呪ったっていいじゃない。仕事できない人が仕事で成功してる人を呪ったっていいじゃない。呪う権利まで奪わないでくれ。みんなで呪い呪われ生きていけばいいじゃない。


「不愉快な歌つくるな」って、「おめーの声、気持ち悪いから学校来んなよ!」と同じレベルだ。

思うのは勝手だけど、よくそんなことを堂々と言えるな。

こういう人が「いじめられる方にも原因がある」って発想に至るのかな。



ぼくはすごい音痴だ。一度自分の歌声を録音して聞いたことがあるが、それはもうひどいものだった。


だから人前では歌わない。恥ずかしいし、他人を不快にさせるだけだから。

でもひとりで家にいるときは歌を歌うこともある。

それを「おまえは音痴だから風呂場でも歌うの禁止な」と言われたら、うるせーボケナス大魔神おととい来やがれこのカメムシが、と言いかえす。いや、言いかえす度胸はないからこっそり言ってきたやつを呪う。呪い、万能。



「気持ち悪い歌を作るな!」とか「タバコの煙イヤだからタバコは自宅でも禁止にしろ!」とか「パクチー嫌いだから全世界でパクチー入った料理作るな!」とか言いつづけた先に明るい未来は待っているのだろうか。はたして自分の大好きなものだけの美しい世界になっているんだろうか。

ぼくはそうは思わないけど。


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