オヴィラプトルという恐竜がいる。名前は「卵どろぼう」という意味だ。
最初に化石が発見されたときにそばに卵の化石もあったため、卵を盗んで食べる恐竜にちがいないと思われてこんな名前になった。
ところが後の調査で、オヴィラプトルの近くにあった卵の中にはオヴィラプトルの子どもがいたことがわかった。つまり彼らは卵を盗んでいたのではなく、自分の卵を温めていたのだ。
しかし「卵どろぼう」の名で定着してしまった彼らは、今もそのまま「オヴィラプトル」という卵どろぼう呼ばわりされている。
ひどい冤罪だ。冤罪が明らかになった今をもってなお、彼らの汚名は雪がれていない。
オヴィラプトル濡れ衣問題は、法治国家の限界を表しているようにも見える。
「疑わしきは罰せず」の原則が無視され、"容疑者"になっただけで犯人扱いされてしまう現実。
法に定まった罰以上に社会的な制裁を課されてしまう実情。
一度汚名を着せられたら、それが濡れ衣であっても永遠に拭えない社会。
こうした社会の危険性に対し、数千万年の時を超えて「卵どろぼう」が警鐘を鳴らしている。
0 件のコメント:
コメントを投稿