THE SECOND(第2回大会)の感想。
渋い渋いと言われていた前回大会でも、テレビタレントとしておなじみの三四郎やスピードワゴンがいたり、テンダラーや超新塾といった華やかな人たちがいたりしていたのだが、今大会でテレビでよく見るのはタイムマシーン3号とななまがりぐらい。どっちも見た目人気はまるでなさそうなコンビだし、他のコンビにいたっては知名度もなければビジュアルもアレな感じで、見た目に華があるのはラフ次元ぐらいか。2022年までのM-1グランプリの人気投票、じゃなかった視聴者投票システムの敗者復活戦だったらどんなにおもしろくてもぜったいに勝ち上がれなかったであろうコンビたち。最高。とにかく『THE SECOND』らしいくすんだ色のメンバーが集まっていてすばらしい。
優勝はガクテンソク。これまでの彼らの漫才のいろんなくだりを詰め込んだ、3枚組ベストアルバムといった感じの圧巻のパフォーマンス。短い時間に6分×3本のネタをぶつけるこのシステムだと、やっぱり正統派しゃべくり漫才が強いね。というかインパクト勝負のネタだと、1日2本が限界。
個人的にいちばん良かったのはザ・パンチ。16年ぶりのファイナリストだそうだが、ほぼ16年ぶりにネタを観た人も多いのでは。ぼくもそのひとり。「あのザ・パンチが16年の紆余曲折を経てこうなったかー」と感慨深いものがあった。昔の「死んで~」はやっぱりどぎつかった(だって死ななきゃいけないほどのことをしてないんだもん)、年を取っていい感じに丸みを帯びてすごく見やすくなった。ずっと楽しそうに漫才をしていた。
ずーっと隙間なくしゃべっていて、そこが最高におもしろいんだけど、さすがに18分も聴いていると疲れてしまう。そして後半は明らかにネタが弱くなっていて、キャラクターのおもしろさも新鮮さを失い、3本目の序盤ぐらいで魔法が解けたようにすーっとお客さんが離れていくのがテレビ越しにも伝わった。そこもまたおもしろかったな。去年のマシンガンズのように。
ハンジロウ。元嫁カフェはすごくいいネタなんだけど、着想のおもしろさで勝つには6分という時間はちょっと長すぎたかな。
元嫁、という設定がおじさんにちょうどマッチしていて、THE SECONDという大会の一本目にふさわしいネタだった。
金属バットは、去年もそうだったけど、意外にきっちり作りこんだネタで勝ちにくるんだよね。ガラの悪いラーメンズ、って感じだった。「あかんポリおる」みたいなシンプルなワードからはじまって、徐々にストーリー性を持たせる、1行ずつ切ってきっちりオチをつける、とずいぶんしっかりと作りこまれた構成。これはこれでいいんだけど、金属バットには「どこまでがネタでどこまでがアドリブかわからない」ネタを期待しちゃうんだよな。それだけの話術があるコンビだからこそ。
ラフ次元。華やかさがあって、見た目も悪くなくて、ポップで、どうして若いときに人気が出てこなかったんだろうとおもわせるコンビだった。関西の番組ですらほとんど目にすることがなかった。
これまたよく考えられたいいネタだったんだけど、THE SECONDで求められるのはこういう前半をフリに使って後半回収するタイプの漫才じゃないよな、という気もする。ラフ次元というコンビを知ってもらうのにちょうどいい名刺のような漫才だった。
ななまがり。おもしろさはわかるけど、これを6分はさすがにちょっと飽きるかな。まして12分見たいとはおもえなかった。おもしろワードの羅列で、ストーリーなんてあってないようなものだからな。1点票が多いのは、このコンビにとっては名誉みたいなもんでしょう。
タモンズ。ネタは弱かったが、演者の人間性だけで魅せるTHE SECONDらしい漫才。深く考えずにぼんやり聴いているだけでけっこう楽しい。それはそうとレイクのツカミ、さすがにこの時代にはもう古くない?
タイムマシーン3号は安定のおもしろさ。ただその安定感ゆえに負けてしまったのかな。安定しているがゆえに、ここで勝たせてあげたい、という気にならない。今回の出場者の中では圧倒的に売れてるし。売れているコンビがこの大会で勝つためには、去年の三四郎のようになりふりかまわぬあぶなっかしさが必要だね。
ということで、レッドカーペットなどで活躍していたコンビがひさしぶりに表舞台に帰ってきた新鮮さが受けて決勝に進むけど最後で新鮮さが薄れてネタ切れも起こし、結局はさんざん舞台に立ってきた正統派しゃべくり漫才師が地肩の強さを見せて圧倒的大差で勝つ、という、昨年大会と同じような流れになりましたね。この感じでいうと、次回の優勝は2丁拳銃あたりか。
やっぱり1日3ネタは多いよね。勝てるコンビが限られてしまう。演じる側の消耗も激しいだろうし、観ているほうも疲れる。このへんは改善の余地がありそう。あと先攻の1勝6敗(昨年は2勝5敗)という後攻有利な採点システムと。
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