2017年8月2日水曜日

五千円札と五円玉の謎

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本屋で働いていたとき、業務のひとつに「銀行に行ってお釣りを用意する」というものがあった。

で、ふしぎなんだけど、お金の種類によって「必ず減っていくもの」と「必ず増えていくもの」があった。
いくつかの店舗で勤務したことがあるけど、どこも同じだった。

五千円札はぜったいに減っていく。
20枚くらい用意していても1日でなくなる。
つまり「会計時に五千円札を出す人」よりも「一万円札を出してお釣りとして五千円札をもらう人」のほうがずっと多いのだ。

きっと誰しも経験があるだろう。一万円札を出したら「すみません、細かくなってしまうんですけど……」と千円札9枚を返されたことが。
あの状況がしょっちゅう起こっていた。毎日銀行に行って五千円札を用意していたにもかかわらず。





ふつうに考えれば、硬貨と千円札(と二千円札)だけで支払いができない場合、五千円札があれば五千円札を出す。なければ一万円札を出す。したがって財布内の五千円札の数は0枚または1枚で、2枚以上になることはない。

全員がこの方法で支払っていれば、店舗のレジ内にある五千円札の量は短期的には増減するが、長期的にはほぼ一定のはずだ。
だが、ぼくが働いていた書店では五千円札は減る一方だった。

月末はまだわかる。給料日の直後なので、銀行で一万円札をおろしてそれを使う人が多い。だから五千円札がなくなる。
でも、お釣りとして渡した翌月の給料日前になるとかえってくるかというと、そんなことはない。五千円札はいつでも出ていくほうが多い。
5年ほど働いていたが「前日よりも五千円札が増えた」ということは一度もなかった。

「五千円札があるのに使わない客」がいるのか? なんのために? 五百円玉貯金は聞いたことがあるが五千円札貯金は聞いたことがないぞ? 一万円札の札束はあっても五千円札の札束をつくる人がいるとは思えないぞ?
ふしぎだ。


そこで、こんな仮説を考えた。
客単価が5,000~10,000円ぐらいの店を想定する。ちょっといいレストランとか安めの居酒屋だったら客単価はそれぐらいだろう。
ここでは、「お釣りで五千円をもらう客」<「五千円札を出す客」であると推定される。
たとえば会計が7,000円だった場合、「五千円札と千円札2枚」または「一万円札」を出す人が多いからだ。
ひとつは、「一万円札と千円札2枚」を出して五千円札をお釣りとしてもらうのは、少し計算がややこしいから。
もうひとつは、細かいお釣りがほしいから。飲食店なら割り勘にすることもよくある。この場合、「五千円札1枚をお釣りとしてもらう」よりも「お釣りでもらった千円札3枚+財布内にあった千円札2枚」のほうがありがたい。分けやすいから。

この仮説はまちがってないと思う。
つまり、この店では五千円札が増える一方で、減ることはめったにない。

その分のしわよせが書店にまわる。
書店で5,000円を超える買い物をする客はめったにいない。99%が5,000円未満だ。
客は飲食店で五千円札を使っていることが多いので、財布に五千円札がある可能性は50%よりずっと低い。
そこで、一万円札か千円札で支払いをし、書店のレジからは五千円札がなくなっていく。

うん、これはありそうだ。





もうひとつの謎。

書店のレジにある硬貨は、五千円札ほど顕著ではなかったが、徐々に減っていっていた。
この理由はなんとなくわかる。

自動販売機やバスの運賃など、「硬貨は使えるけど紙幣は使えない/使いにくい」状況というものがある。
こうしたところで硬貨を使う分、店頭では紙幣を使うことが多くなる。
また、世の中には小銭は募金箱に入れたり、自宅で小銭貯金をしたりしている人もいる。結果、店舗で流通する硬貨は少しずつ減っていくことになる。

ここまではいい。
だがふしぎなのは、なぜか「五円玉だけはぜったいに増えた」ということだ。
五千円札が前日より必ず減っていたのとは逆に、五円玉は前日より必ず増えていた。
書店においては、五円玉を出す客のほうがお釣りで五円玉をもらう客より多かったのだ。

これは五円玉だけで、一円玉や五十円玉は少しずつ減っていっていた。

謎だ。
書店の五円玉が少しずつ増えていくということは、どこかに五円玉が少しずつ減っていく店もあると思うのだが、それがどういう店なのかも検討がつかない。

この謎はいまだ解けない。
「こういう理由じゃないか」という推理を思いつく人は、ぜひ教えてほしい。



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