2023年5月22日月曜日

THE SECOND(2023.5.21放送)の感想

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 おもしろかったね。

 トーナメント形式とか、観客審査とか、後攻が超有利な予選(不戦勝を除いて先攻の4勝19敗はさすがに偶然では片づけられないだろ)とか、いろいろ不安要素があった大会だったけど、ふたをあけてみると陵南戦の湘北のように不安要素がいい方に転んでいい大会となりました。

 決勝トーナメントでは先攻の2勝5敗で後攻有利な状況は変わってなかったんだけど、うち1敗は同点での敗退だったことを考えればまあくじ運の妙と言える範囲。なによりM-1グランプリやキングオブコントのようなトップバッター超不利という大会に比べるとはるかに良かった。

 予選では1組ごとに点数をつけていたのを、2組終えてからの採点にしたことでよくなったんだろうね。失敗を認めて軌道修正できる人はえらい。手さぐり状態の第1回大会だった、ということを考えれば大成功といっていいだろうね。

 これを機に、比類なき大会として君臨していたM-1グランプリが、長年不公平だと言われているのにいっこうに改善しようとしない「トップバッター超不利なシステム」や「単なる人気投票となり下がった視聴者投票敗者復活システム」を改めてくれるといいなあ。


 なにがよかったって観客がよかったよね。

 対戦後に審査員コメントを訊いていたけど、みんな的確だった。「〇〇のファンだから〇〇に3点入れましたー」「うるさくて嫌いだったんで1点です」みたいなアホ客がいなかった(少しはいたのかもしれないけど)。

 どうやって審査員を集めたのか知らないけど、審査員のほうもぜったいに選考されてるよね。ふつうに「審査してくれるお笑いファン募集!」ってやったらこんないい観客にはならないもんね。M-1やR-1で審査員をやってた××さんとかよりずっとまともだったね。



 まず優勝したギャロップについてだけど、いやあ、よかったね。1本目のカツラ、3本目のフレンチシェフのネタは6分にぴったりの内容。2本目の電車のネタも後半に盛り上がりどころがあって、ちゃんと勝つためのネタを3本用意してきたって感じだったね。

 ただいくつかアラもあって、導入が少し雑というか、毛利さん側の論理にかなり乱暴なところがあって、そこが処理されていないところが気になった。それがM-1の4分間だったらマイナスになってたのかもしれないけど、6分もあったのと、3段階評価だったので、多少のアラには目をつぶってもらえたのかもね。

 また、3本目のフレンチシェフのネタは笑うポイントが少なかったけど、それが3時間以上やって笑い疲れている客にはちょうどよかったのかもしれない。あの時間帯にカツラネタみたいな頭を使うネタをやってたらついていけないもんね。

 いろんな意味で大会にぴったりマッチしたコンビだったので納得の優勝。



 逆に大会のルールにあってなかったのがテンダラー。

 彼らの持ち味はなんといっても音楽に乗せたコミカルな動きだけど、歌いながらキレのある動きをしつづけるのは相当体力を使うはず。あのダンスパートは1分ぐらいしかできないんじゃなかろうか。6分のネタ、しかも最大3本披露するかもしれないとなれば、どうしても序盤は力をセーブしなくちゃいけない。4分ネタだったらテンダラーがギャロップに勝ってたかもねえ。

 テンダラーのネタは、いかにも劇場や営業に立ちつづけているコンビのネタって感じだったね。細かいネタの組み合わせで、何分にも調整できる。前のコンビが長引いたり、あるいは欠場が出たりしても調節できるネタ。それが今回はマイナスに響いたのかもね。

 先攻だったことも大きく不利になったかもね。テーマが散漫だったので、後で思いかえしたときに何のネタだったのか思い出しにくい。



 準優勝のマシンガンズもよかったなあ。1本目や2本目は正直あんまり好きじゃなかったけど(2本目なんか相当古いネタだよね?)、大会中最低得点となった3本目が個人的にはいちばん好きだった。

 今までM-1とかでも「もうネタがない」って言ってるコンビはあったけど、まさかほんとにないとは。まるで並みいるプロの中に一組だけセミプロがいるかのようで、そこが勝ち進んじゃうハプニングっぽい感じも含めていちばん笑った。

 客席とのグルーブ感もあったようにおもえたけど、妙に冷静な審査結果で派手に散る。その散り方も含めて見事。

 いちばん好感度を上げたのはこのコンビだろうね。自分たちの売り込みには成功した。来年はもう出なくていいよね。あ、ネタがないから出られないか。



 金属バットは6分ネタに向いているかとおもって期待してたんだけど、やや期待外れだった。たたずまいとかフレーズとかが語られることが多いコンビだけど、ぼくが好きなところは金属バットのネタのストーリー性なんだよね。昔やってた谷町線のネタとかプリクラのネタとか、立ち話からとんでもないところまで話を展開していて、そのストーリーテラーとしての才能に感服してたんだけど、今回のネタは大喜利の羅列みたいで話がふくらまなかった。



 スピードワゴンは、昔からやっていることがずっと変わんないね。良くも悪くも。

 さすがに50歳のおじさんに「四季折々の恋」というテーマで漫才をやられると見ていてキツい。それが小沢さんの魅力でもあるんだけど。あと井戸田さんが安達祐実と結婚していたことをネタにするには鮮度が落ちすぎじゃないか。

 でも「するりと小沢の世界に入ってしまう潤」のくだりは笑った。



 三四郎のネタはM-1の予選でしか観たことなかったので、M-1から解放されたらこういうネタをやるんだ、と新鮮だった。

 固有名詞満載でふつうの大会ならあんまり評価されないネタだけど、テレビやラジオでおなじみになった三四郎のキャラクターや、観客審査ということをうまく利用して許されていた。「彼らにしかできない漫才」って熟練の味が出ていてよかった。

 でもやっぱり「こういう大会では売れてない人に勝ってほしい」という気持ちが湧いてしまうので、素直に応援しづらい。



 超新塾。現行体制になってからネタを見るのははじめて。

 盛り上がるんだけど、5人だったらこういうネタだろうな、外国人を使うならこういうネタをやるだろうな、という想定を超えてはこなかったな。あとツッコミの声質がちょっと弱いというか。4人に対してツッコミを入れるなら相当声量がないとバランスがとれない。プラン9の漫才にも同じことを感じたけど。

 ネタ以外の部分でもいろいろボケを用意していたのがよかった。



 囲碁将棋。優勝候補の一角として挙げられていたけど、下馬評に劣らぬ漫才だった。

 ほとんど動きを使わず会話だけでじっくり聞かせる漫才で、同じく話術で魅せるタイプのギャロップとの東西しゃべくり漫才対決はほんとに見ごたえがあった。

 ちなみに9歳の娘といっしょに観ていたのだが、娘は囲碁将棋の漫才を観て「ぜんぜんおもしろくない」と言っていた。そうだよえ。囲碁将棋のやっていることってかなり前提知識を必要とするもんね。あるあるをそのままネタにするんじゃなくて、「あるあるを知っている前提でその上にネタを乗せる」漫才というか。

 ものまねのネタでいうと「もしも五木ひろしがロボットだったら」「受け答えがたまたまあいうえお作文になってしまった児玉清」みたいなネタを知らないと、囲碁将棋の漫才は理解できない。副業のネタにしても「強豪校近くのパン屋」「学校指定の制服屋」みたいなものを実体験として知っていないと理解できないので、囲碁将棋で笑うためには人生経験が必要だ。

 だからこそポップなネタ番組にはあんまり呼ばれないんだろうけど、大人向けの漫才をやるコンビがこうして評価される場ができたことはほんとにいいことだ。



 総じておもしろい大会だったんだけど、おもしろすぎて疲れてしまった。贅沢な悩みだけど。

 途中で松本人志さんが「このへんで歌を聞きたい」と言っていたけど、あれは半分本音だったとおもう。6分のおもしろい漫才を14本ぶっつづけに聴くのはしんどいよ。寄席だったら途中でマジックショーとか大道芸とかを挟むけど、ああいう色物の重要性がよく理解できた。



 予選はともかく、決勝はそんなに厳密に順位つけなくてもいいんじゃないかとおもった。

 とにかく上質な漫才が見られればいいので、昔のキングオブコントみたいにみんなが2本ずつネタをやっていちばんおもしろかったコンビ3組に投票、みたいな感じでもいいんじゃないかな。

 やっぱり3本は多いし、1本だとものたりないし。



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