腸詰小僧
曽根圭介短編集
曽根 圭介
ミステリ短編集。
曽根圭介氏らしい、猟奇的、暴力的な題材を扱ったものが多い。
七篇どれもそこそこのクオリティなのだが、まとめて読むと少々飽きてしまう。似たパターンが多いのだ。
もう少し具体的にいうと、Aという人物のストーリーとBという人物のストーリーが交互に展開して、AとBをつなぐ一本のストーリーが見えてきた……とおもったら最後にひとひねりあってAとBがまっすぐにつながらない、というパターン。
『解決屋』では、解決屋という名目で殺人を代行する男と、売春宿で働く少年が描かれる。
『天誅』では、父親からの性的虐待に遭っている同級生を救おうとする少年と、性犯罪者を追う刑事が交互に書かれる。
『成敗』では、悪事をはたらく人物に私刑を与える快楽にとりつかれてしまう男と、前妻への復讐のために闇サイトで知り合った人物に前妻の拉致を依頼する男が交代で書かれる。
『母の務め』では、殺人犯として死刑を求刑された息子の減刑を望む母親と、職場の女性を殺してしまい死体処理に悩む男のストーリーが交互に展開。
もちろん〝ひとひねり〟の手法はそれぞれちがうのだけど、さすがにこれだけ似たパターンが続くと「これはすんなりつながらないな」と展開がある程度読めてしまって辟易してしまう。
その他『腸詰小僧』『父の手法』『留守番』を含め、どの短篇も読者を裏切るどんでん返しが効いているのだけど、どんでん返しが七回続くとさすがにうんざりする。どうせどんでん返すんでしょ、ほらどんでん返したー! とおもうだけで裏切りでもなんでもない。予想通りのどんでん返し、と言ったところか。
七篇中一篇か二篇にそういう話があれば「まさかこう来るとは!」と感心したんだろうけどな。
ところで曽根圭介さんの作品は、初期のころのブラックSFサスペンスみたいなやつが好きだったんだけど、もう書くのやめちゃったのかなあ。
ミステリに寄っちゃったなあ。この人に限らず、そういう作家は多い。SFやブラックコメディなんかは書くのに体力を使うのかな。そしてミステリのほうが売れるからミステリばかりになってしまうのかもしれない。
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