2020年7月20日月曜日

自分を捨てること

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結婚するとき、高校時代の恩師から

「結婚生活をうまくやっていく秘訣はただひとつ。自分を捨てること。夫、父親がなにかを要求するなんておこがましいとおもえ」

とアドバイスをもらった。

自虐ジョークだとおもって「あざーっす」とへらへら聞き流していたのだが、最近になってその言葉が身に染みる。
さすがは恩師の言葉だ。
「親の意見と冷や酒は後で効く」という言葉があるが、恩師の言葉も十年してから効いてくる。



ほんと、父親が家庭内でうまくやっていく秘訣は「自分を捨てる」に尽きる。

趣味は捨てる。余暇も捨てる。仕事の付き合いも極力捨てる。欲も捨てる。プライドも捨てる。
仏教でいう「無我」の境地だ。

子どもに誘われたら遊ぶ。
妻に何かを命じられたら何をしててもすぐ行動する。
子どもが食べたいといったら自分の分を分けあたえる。
早めに謝る。
子どもの生活リズムにあわせて生活する。

これがうまくいく秘訣だ。
かんたんだ。自分を捨てるだけ。

いや慣れるまではかんたんじゃなかったけど。



おもえば、ぼくの両親もそうだった。
母は家事育児に明け暮れていた。
父は仕事人間だったけど休日も「自分のしたいこと」などしていなかったようにおもう。
朝は犬の散歩に行き、町内会の草むしりに参加し、車を運転して家族を買い物に連れていき、庭仕事をやり、家の掃除や洗車をし、子どもと遊び、家族を外食に連れていっていた。
父にも母にも「自分の時間」なんてほとんどなかったんじゃないかな。

当時のぼくはそれがあたりまえだとおもっていなかった。
親もつらいななんて考えてなかった。どの親もそんなもんだろうとおもっていた。

なぜなら、父も母も、それなりに楽しそうにしていたからだ。
もちろん不機嫌になったり疲れた様子を見せることはあったけど、総じてごきげんだった。

なかなかやるじゃないか。
数十年前に戻って両親を褒めてやりたくなる(何様だ)。



自分を捨てること。
それなりにごきげんでいること。

ただそれだけ。
かんたんで、むずかしいことだね。


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