2019年10月4日金曜日

【読書感想文】設定の奇抜さ重視なのかな / 田丸 雅智『ショートショート 千夜一夜』

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ショートショート 千夜一夜

田丸 雅智

内容(e-honより)
多魔坂神社のお祭りの夜、集うのは妖しの屋台と奇妙な人々…。欲しいと念じたものが出てくるヒモくじ屋。現れたゴロツキどもが引いたヒモの先には(「ヒモくじ屋」)、夜店ですくった人魚がみるみるうちに成長して(「人魚すくい」)、モデルにスカウトされたエリカが突然行方不明に(「ラムネーゼ」)、降り注ぐ優しい雨を、自分のものにする方法(「雨ドーム」)他、珠玉のショートショート全20編。いちどページを開いたら止まらない!わずか5分間の物語が、あなたを魅惑と幻想の世界へと誘います。巻末には、しりあがり寿さん描き下ろし「あとがきの夜」も特別収録。

神社のお祭りの夜をテーマにしたショートショート集。
全篇が「多魔坂神社のお祭り」に関係するという設定はおもしろい。神社のお祭りってあちこちでふしぎなことが起こってそうな気がするもんなあ。

ショートショートというと、どうしても星新一と比べてしまう。
死後二十年たってるのにまだ星新一とか言ってるのかよとかおもうかもしれないけど、ぼくにとっては神様みたいな人で物語の楽しみを教えてくれた人だから、どうしたって「星新一と比べてどうか」という目で読んでしまう。

ショートショートとは何かという質問に対しては、ぼくは短さ以上に「切れ味の鋭いオチ」が重要だと答える。
以下に意外性を見せるか、読者をだますか、余韻を残すかがショートショートに欠かせないものだと。

その基準でいくと、この『ショートショート 千夜一夜』はものたりなかった。
奇抜な設定はおもしろくて、起承転結の起承までは申し分ないのに、最後の最後で期待を下まわってくる。ハードルを上げて上げて、最後にハードルの下をくぐってくるというか。えっ、なにそのおもってたよりしょぼいオチ。悪い意味でだまされた気分。

まあショートショートに求めるものがちがうんだろうね。
この作者は、たぶん設定の奇抜さを重視しているんだろう。
大喜利のお題にいかに切れ味よく回答するかより、いかに独創的ないいお題を出すかに力を入れているというか。


しかしそんな中で『ストライプ』は設定もオチも秀逸だった。
ストライプのシャツの中から男の声がする、まるでストライプ模様が檻のようになって出られないようだ……という導入から、丁寧な話運びに「シャツ」「檻」を活かした鮮やかなオチ。
そうそう、ぼくがショートショートに求めるのはこれなんだよね!


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