2019年6月3日月曜日

刺青お断り

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多くの銭湯や銭湯には「刺青お断り」の貼り紙がある。

ぼくは刺青もタトゥーも入れていないからべつにかまわないんだけど、ふと「刺青お断り」はなぜ許されるんだろうか、と疑問におもった。


「刺青の人お断り」は、「タオルを湯船につけてください」や「身体をよく洗いながしてから湯船につかってください」とはちがう。

なぜなら、刺青はそれ自体が他人に迷惑をかけるものではないから。

「いやわたしは刺青を見るだけでも不快だ。だから迷惑だ」という人もいるだろうが、それは禁止の理由にならない。
たとえばぼくは刺青を入れてようが入れてまいが、他の男の裸を見るのが不快だ。
太ったおじさんのケツなんか見たくない。でもそんなことを言いだしたら公衆浴場自体が成り立たなくなる。
個人の好き嫌いをもって入場制限をすべきではない。


「刺青お断り」というのは要するに「ヤクザお断り」だ。

でも「ヤクザお断り」と書いたって「おれはヤクザじゃない」と言われてしまえばそれまでなので、わかりやすい外見的特徴である刺青を「ヤクザを表す記号」として入場禁止のシグナルにしているわけだ。

でも刺青はヤクザは一対一で対応するものではない。
刺青を入れていないヤクザもいるし、ヤクザじゃないけど刺青を入れている人もいる。
「刺青を入れている人はヤクザであることが多いだろう」というあやふやな根拠で、一律に入場を制限してもよいものだろうか。

ある属性に多い特徴を持って一律に禁止する。
ずいぶん乱暴な話だ。
これが差別でなくてなんだろう。
「〇〇村出身者は犯罪者が多いので〇〇村出身の人間は雇いません」と同じではないだろうか。

「スーツを着ている人は男性が多いので、この女性用トイレはスーツの人禁止です」としてもよいだろうか。だめに決まってる。


ふうむ。
考えれば考えるほど「公衆浴場は刺青禁止」と「女性用トイレはスーツ禁止」が別物とは言えなくなってきた。

考えてみれば、トイレだって自己申告だ。
入るときに戸籍の提示も求められないし、パンツを脱いで見せるわけでもない。
「女っぽければ女性用トイレに入っていいし、男っぽければだめ」というあやふやなルールでやっている。

だったら公衆浴場も自己申告でよしとするのがスジじゃないだろうか。
「ヤクザお断り」と書いておく。それだけ。

どうせヤクザの入場を防げないんだからそれでいいんじゃないかな。
こっちとしても、「刺青丸出しのわかりやすいヤクザ」よりも「どこにでもいるふつうのおじさんだとおもっていたら実はヤクザだった」のほうがぞっとするし。


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