2019年1月8日火曜日

【読書感想】マウンティングのない会話もつまらない / 瀧波 ユカリ・犬山 紙子『マウンティング女子の世界』

このエントリーをはてなブックマークに追加

『マウンティング女子の世界』

瀧波 ユカリ  犬山 紙子

内容(e-honより)
「私の方が立場が上!」と態度や言葉で示すマウンティング女子。肉食女子vs草食女子、既婚女子vs独身女子、都会暮らし女子vs田舎暮らし女子…。思わずやってしまう、そしてちょっとスッキリしてしまう、でも後から思い返すと後悔ばかり。勝ち負けではないとわかっていても、自分の方が上だと思いたい。そんな「女の戦い」の実態に、赤裸々な本音で鋭く迫る!

この対談で語られる”マウンティング”とは、「相手より自分のほうが上だというアピールを善意を装って示す」といった行為。
たとえばこんな会話。
瀧波 そうそう、武装して臨んでしまう女子会と、肩肘張らないでいい全裸女子会がある。
犬山 全裸女子会は楽しいですよね!
瀧波 一方の武装女子会は一見みんな笑顔なんだけど、水面下では殴りあってるイメージ。たとえば、「紙子ってスゴイよね~、いつも堂々としてて、かっこよくて憧れちゃう〜。私もそうなりたいけど~、恥じらいが強すぎるから~。あ~、一度は女を捨ててみたい~」
大山 「えー? でも私はユカリみたいに奥ゆかしいかんじにあこがれてるよ~。ユカリの”一人じゃ何もできない”って雰囲気、イイよね~。男の人がなんでもしてくれそう~。何でも自分でやっちゃう私の無駄な行動力とかホントいらないし~」
瀧波 そんなかんじ(笑)。お互いひたすらほめちぎるスタンスをとりながら、暗に相手をdisって(批判して)自分を上げるという。
犬山 親しい同士が集まる女子会でも、冒頭のマンガのように誰かが結婚した、家を買った、みたいな環境の変化で急に武装女子会になっちゃったり......。
全裸女子!? 最高じゃん!(文章の一部しか読まない人)

それはさておき、ぼくは女子会なるものに参加したことがないんだけど(あたりまえだ)、女子会ではこんなことやってんのか。みんながみんなこうではないんだろうけど。女の世界はたいへんだー。

男同士の会話だと、こういうのはあんまりない。
男は単純だから素直に自慢する。
「結婚はいいよー」とか「おれ今責任ある仕事を任されてるんだよね」とか自分で言っちゃう。
だからあんまりマウンティング合戦というのは起こらない。
謙遜を装って相手をおとしめる、なんて手の込んだことはあんまりしない。相手をおとしめたいときは直截的にやる。
瀧波 あはは。男の人の場合はパッと見でわかるものでマウンティングする傾向があるね。愛人とか、デカい時計とか、筋肉つけるとか。
犬山 女のマウンティングはさりげないですものね。八〇年代は肩パッドや前髪を大きく、九〇年代はどんどん目を大きくしていったけど、今はデカさで勝負はあまりない。
瀧波 盛ってることに気づかれないよう盛ってるから、そのぶん巧妙。でも、男は未だにデカいロゴの付いた服を着てたりするでしょ。言っちゃ悪いけど「バカなんじゃないかと思ってしまう(笑)。
犬山 ラルフローレンのポロシャツのロゴもどんどん大きくなりますしね。
灘波 きっと、デザイナーも「デカくしておさらいいんだ、デカすりゃあ」って(笑)。本当に言葉のマウンティングじゃないんだね。
とにかくわかりやすいんだよね。
自慢するときは誰が見ても自慢だとわかるようにやる。
相手の言うことを否定ばかりする人はいるけど、それだってわかりやすいから周りが相手をしなくなってやりあいにならない。

そもそも男同士の上下関係って「年齢が上」とか「役職が上」とか「収入が多い」とか「力が強い」とかわかりやすいことで決まるから、あんまりマウンティングする必要がないのかもしれない。

女同士だと「向こうのほうがモテるけど仕事は自分のほうができる」とか「華やかな暮らしをしているのは向こうだけどこっちは子どもがいる」とか、成功のパターンが多様なので単純に比較がしにくいのかもしれない。
ぜんぜんちがう土俵でそれぞれ殴りあって四勝六敗、みたいな十種競技がマウンティング合戦なのかも。



はじめのほうは「マウンティング合戦こえー」なんておもいながら読んでたんだけど、中盤から同じような話のくりかえしになって飽きちゃった。
一冊の本にするほどのテーマじゃないんだよなー。

後半にとってつけたように「マウンティングしがちな私たちはどう生きていくのがいいのか」なんて説教も書かれてるけど、そのへんは特につまらなかった。
もともと「こういうことあるよねー」ぐらいの愚痴の言いあいなんだから、むりやり教訓めいたことをつけたさなくていいのになー。

マウンティングというテーマだからか、瀧波さんも犬山さんも相手を気づかいあっている感じで、対談しているのに発展がない。
「こうなんですよ」
「あーそうですよねー」
の応酬。うすっぺらい共感がひたすら続く。
ときには相手の発言を否定したりしないと深みのある対談にならないのに。

その場にいない誰かさんの悪口に終始する、ガールズトークの悪い部分が全面に出たような対談だった。
マウンティングはよくないっていうテーマの本だけど、マウンティングの一切ない会話もつまらないということがよくわかる本だった。

【関連記事】

【読書感想】瀧波 ユカリ『ありがとうって言えたなら』



 その他の読書感想文はこちら


このエントリーをはてなブックマークに追加

0 件のコメント:

コメントを投稿