インターネット・ゲーム依存症
岡田 尊司
少し結論ありきで論調が進んでいて、データとしては疑わしいものも多い。
「スマホ依存の人ほど脳の活動が鈍い」みたいな話が再三出てくるが、因果関係が逆なのかもしれないし。
とはいえスマホやゲームにどっぷりはまるのは良くない、ということについては異論がないだろう。
スマホにかぎらずなんでもやりすぎはよくないのだが、スマホゲームに関しては「場所や時間を問わず使える」「依存しやすいように作られている」という側面もあるため、とくにはまりやすいし、深刻化しやすい。
ぼくから見ると、電車のホームでスマホゲームをしながら歩いている人なんかはもう完全に暇つぶしの域を越えていて依存症としか思えない。
歩きスマホをするぐらい熱中するのを依存症の定義としたら、日本人の二割ぐらいは依存症じゃないだろうか。
阿片戦争直前の中国は男性の四分の一がアヘン中毒だったといわれているので、もうそれに近いぐらいのスマホ中毒者がいることになる。
だがアヘンとちがい、スマホやゲームへの依存は今の日本では大きな問題になっていない。
スマホやオンラインゲームは麻薬や覚醒剤のように法に触れるものではないし、タバコのように周囲に迷惑をかけるものではない。
それが逆に、依存症という問題を認識しづらくさせてしまう。
ぼくが前いた会社に、オンラインゲームによく課金をしている人がいた。
どれぐらい課金しているのか訊いたことがある。その人が「多い月だと十五万ぐらいいっちゃいますね~」と笑いながら話すのを聞いて、ぼくを含めその場にいた人たちはドン引きしていた。
後で「あれはヤバいよね」「ゲーム廃人じゃん」「しかもあの人結婚してて子どももいるのに」とみんなでささやきあった。
大金持ちなら月に十五万課金したって屁でもないんだろうが、同じ会社にいるぐらいだから給料もだいたいわかる。どう考えたって課金しすぎだ。
しかも額の多寡はあれど、毎月課金しているという。
だが、誰も本人に「やめたほうがいいですよ」とは言わなかった。
いい大人が自分の意思でやっていることなのだから他人がとやかく言うべきではない。それは大人としては正しいふるまいかもしれないが、すごく不誠実な対応だったではないだろうか。本人に嫌われてでも、止めてあげるべきだったのかもしれない。
どう考えたって月に十五万の課金はやりすぎだ。娯楽やストレス発散といった段階を超えている。
しかし仮にぼくが「ぜったいやめたほうがいいですよ」と言ったって、おそらく彼は「そうですね」と受け流して課金を続けるか、「余計なお世話ですよ」と言ってぼくと距離をとるかのいずれかだっただろう。
もうこれは完全に病気だ。
もうやっても楽しくない、でもやらないと苦痛を感じる。そしてやれば確実に悪い方向に行くとわかっていながら突き進んでいくのだから、破滅願望に近い。
こういう状態に陥っている人は、相当いると思う。そしてこれからもどんどん増えていく。
個人の問題ではなく社会問題として、法律で「月額課金上限額を〇円までとする」とか定めないかぎりは、依存症患者は増えていく一方だろう。
だがはたして政治家にそれができるのかというと、まあ無理だろうな……。ゲームをさせることは(短期的な)カネになるもんな。
長期的に見たら国家の大きな損失になるのはまちがいないんだけどな。
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