本屋で働いていたときのこと。
店の駐輪場に自転車を停めて、店で買い物をせずにどこかへ出かける人がいる。
広い駐輪場ではないので見かけたら注意するようにしていたが、それでも放置自転車はけっこう並んでいた。
あるとき、開店前に30歳くらいの白人男性が自転車で駐輪場にやってきた。
自転車を置いてバス停へと歩いていこうとしていたので、呼び止めて注意をした。
「すみません。ここに自転車を置いていかないでくださいね」
「ドウシテデスカ」
「ここはお店を利用する方のための駐輪場なんで」
「アーハイハイ。ワタシ、コノ店ヨク利用シテマスヨ」
「えーっと。そうかもしれないですけど、今はまだ開店前ですよね。店を利用する時間だけ、駐輪場を使ってもいいんです」
するとその男性、突然顔を真っ赤にして怒りだし、
「ドウシテデスカ! ドウシテワタシダケニ言ウデスカ! 他ノ人モ停メテルジャナイデスカ! コノ人モコノ人モコノ人モ!」
怒りに満ちたその言葉を聞いて、ぼくは腹が立つというよりちょっとうれしくなった。
よく「赤信号みんなで渡れば怖くない」という思考が日本人的だと言われているけど、なんだ外人もけっこう長いものには巻かれてんじゃないか。
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