近くのスーパーで抽選会をしていた。
ぼくも買い物を終えてレシートを握りしめて抽選の列にならんだ。
ぼくの前にならんでいたのは中国人の夫婦だった。
夫婦は、おばちゃんの店員にレシートを渡し、箱の中からくじをひいた。おばちゃん店員はレシートに「くじびき済み」という意味のサインをして、中国人夫婦に返す。
ふんふん、なるほどね。
手順は把握した。
次はぼくの番。
おばちゃん店員にレシートをさしだすと、おばちゃんはレシートをちらりと見ただけで手に取ろうとせず、くじの箱をぼくに渡した。「はいどうぞ。1枚ひいてください」
ん?
レシートにサインするんじゃないの?
「あれっ。レシートは……?」
「あ、いいのいいの」
「えっ、でも、さっきの人はサインしてたし……」
「ああ。サインは中国人だけなの。
あの人たちはほっとくと何回も並ぶから」
とおばちゃん。
すごい。
なんて正直な人なんだ。
思っていたとしても、なかなか口に出せるものではない。ましてや初対面の相手に。
たいていは大人として、差別的な発言をしちゃいけないというブレーキがはたらいてしまう。
しかしこのおばちゃんは断言した。中国人はルールを守らない、と。
なんと潔いのか。すがすがしいほどだ。
このおばちゃんの潔さに敬意を表して、ぼくも断言しよう。
世界中のスーパーのおばちゃんはすべて潔い、と。
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