2026年9月23日水曜日

【読書感想文】プチ鹿島『お笑い公文書2025 裏ガネ地獄変』 / 権力べったりの新聞にも価値がある

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お笑い公文書2025 裏ガネ地獄変

プチ鹿島政治コラム集 2

プチ鹿島

内容(e-honより)
時事芸人が放つ公益通報コラム。裏金事件、石破「だらし内閣」、103万円の壁…を深く読み解く。

 新聞を13紙も購読して読み比べしているという芸人・プチ鹿島さんによる政治コラム集。

 タイトルには「2025」とあるが、コラムは2023~2024年に掲載されたものが中心。自民党裏金問題、安倍元総理暗殺・国葬問題、岸田首相→石破首相へのバトンタッチ、都知事選の話題など。


 ほんの数年前のことだが既に「あーこんなこともあったなー」という感じだ。政局というのは目まぐるしく動くし、人々が忘れるのも早い。ぼくは政治ニュースが好きなのでわりとチェックしてるほうだとおもうのだが、それでも忘れている。

 いわんや政治に興味のない人々にとっては、政治家がどれだけ悪さをしても1年もたてば記憶の隅にも残っていないのだろう。そりゃあ政治家は罪を認めて責任をとるより、のらりくらりと逃げるほうを選ぶよね。



 プチ鹿島さんのお家芸といえばなんといっても「新聞読み比べ」。

 同じ話題でも新聞によって書き方はぜんぜんちがう。それを「偏向報道だ! これだからオールドメディアは」と言うのは子どもの反応(逆に変更していない報道がどこにあるのか教えてほしい)。

 良識ある大人は偏向報道であることを承知した上で、その違いを楽しむのだ。何紙も読むことで「なぜこの新聞はここには触れないのか」「なぜこの新聞だけがこの情報を知ることができたのか」が見えてくる。プチ鹿島さんは“書かれていないこと”を読み解くのが本当にうまい。

 裏金問題等の「責任をとる」という理由で逃げるように衆院選不出馬を決めた自民党の大物・二階俊博氏について。

 内輪の論理。結局、裏金についての説明はないまま終わらそうとしている。有権者にとって「ベストなタイミング」だの「政治的技術」だのは心底どうでもい。
 新聞の論調もおおむねそう。
『二階氏の不出馬責任逃れは許されない』(京都新聞3月27日・社説)
『二階氏の不出馬表明処分逃れ、裏金解明遠のく』(河北新報3月25日・社説)
『二階氏の不出馬表明責任逃れの幕引き許されぬ』(中国新聞3月26日社説)
 ただ、新聞にもいろいろある。北國新聞の「時鐘」(一面コラム、3月29日)は『義理と人情』というタイトルで二階氏について、
《義理人情の人を続けるのは楽ではないだろう。何かとお金もかかる、と想像する》
《義理人情に厚い親分としては政治責任を取ると言わざるを得ない場面である》
 
 (中略)
 
 そして、
《昭和の空気をまとう政治家には住みにくい世間になった》
 とも書いていた。政治とカネの説明責任より義理人情がお好きなよう。そういえばこのコラムは昨秋の馳浩知事の五輪機密費発言の際に、
 《「機密」を口にしたら身も蓋もない。触れない方がいいことには触らない。伏せておくことは、しゃべらない。それで世の中は成り立つ。》(2023年11月22日)
 と、およそ言論機関とは思えないことを書いていたっけ。自分も権力側という視点だった。森喜朗先生と仲の良い新聞だけある。二階先生、次回は北國新聞がある石川県から出馬したらどうですか。

 裏金なんか誰が見たって悪だろう。仮に裏金によって利益を得ている身だったとしても、少なくとも建前上は「裏金は許されない」というのがまともな大人だろう。

 ところが北國新聞は《昭和の空気をまとう政治家には住みにくい世間になった》と「二階さんもおつらいよね。昭和の時代だったら許されることだったのに」と、裏金議員に同情してみせるのだ。すごい。

 さらに「触れない方がいいことには触らない。伏せておくことは、しゃべらない。それで世の中は成り立つ。」なんて、報道機関として自殺に等しい宣言だとおもうのだが、それを堂々と書いてみせるのだ。

 いやあ、地方にはまだまだすごい新聞があるんだなあ。権力とべったりであることを隠そうともしない。相当甘い汁を吸ってるんだろうな。そりゃあどれだけ不祥事をしても一部地方で自民党が勝ち続けるわけだ。



 北國新聞に負けず劣らず、四国新聞もすごい。

 四国新聞といえば、自民党の平井卓也議員の弟が代表取締役を務めていることもあり、ほとんど自民党の機関紙と化していることでも有名な新聞だ。

 裏金問題から党の「刷新」イメージができる候補を求める動きがあると書かれている。中には露骨なこんなコラムもあった。
『「次」は女性か若い人』(四国新聞7月14日)
〝政治ジャーナリスト〟田崎史郎氏が、麻生太郎氏が周辺に漏らしているという言葉を紹介している。
《麻生氏が念頭に置く「女性」と「若い人」の正体
「次は女性か、若い人じゃないか。若い人は50歳以下だ」》
 麻生氏の念頭にあるのは上川陽子、小泉進次郎、小林鷹之とみられていると田崎氏は書く。
 個人の資質より「女性」や「若い人」が先にきているのはいかにも選挙利用に見えるし、そういう麻生氏の言葉を嬉々として伝える田崎氏もどうなのかと思う。
※ちなみに田崎氏のコラムを載せている四国新聞は自民党・平井卓也議員の一族が経営している新聞。これだから四国新聞は逆に見逃せない。

 政権べったりの新聞だからこそ、権力者の本音が漏れる。

 朝日新聞や毎日新聞相手なら警戒して言えないようなことも、太鼓持ち新聞相手なら気を良くしてついつい漏らしてしまうのだろう。

 先ほどの北國新聞のコラムもそうだが、政権側の立場を新聞だからこそ「こんなこと書いたら批判されるだろうな」と気づかずに書いてしまうんだろうな。なぜなら己が批判精神を持っていないから。


 あえて自分とはまったく異なるスタンスの新聞を読んでみると、いろいろと発見がありそうだ(ぼくはそこまでしようとはおもわないので、お金と時間を使ってやっているプチ鹿島さんには頭が下がる)。



 2024年に最も話題を集めた政治家が斎藤元彦・兵庫県知事。

 パワハラ、内部告発つぶし、阪神・オリックス優勝パレードをめぐる背任など様々な問題で不信任決議を受けた斎藤知事が出直し選挙に出馬。圧倒的不利かと思われたが、立花孝志氏らが積極的にデマをまき散らして知事を擁護(というより告発者や対立候補らを攻撃)。

 結果的に、多くのデマに助けられたことも後押しして斎藤氏は再選を果たした。

 この結果を受けて「オールドメディアの敗北」が話題になった。

 斎藤氏を支持した人たちからすればテレビや新聞はさんざん斎藤氏側にネガティブな報道をしていたが、「NHKから国民を守る党」の立花孝志党首をはじめとするSNSやネット情報のおかげで「真実」を知ることができた。だから「オールドメディアの敗北」なのだろう。
 一方で斎藤氏の一連の疑惑を注視していた人たちからすれば、選挙期間に新聞やテレビが中立・公平を自称しているときにSNSで真偽不明の言説が自由に飛び交った。その状態に「既存メディアはこれでいいのか」と疑問に思った人も多いだろう。つまりどの立場からもメディアは疑問を持たれていたのだ。
 しかもメディアは選挙の翌日から饒舌になった。読売と朝日の社説を並べてみよう。
『兵庫県知事選真偽不明の情報が拡散した』(読売新聞11月1日)
『選挙と立花氏言動を看過できない』(朝日新聞11月23日)
 それならもっと早く言ってよ! と思ったのは私だけだろうか。毎日新聞も社説で、《見逃せないのは、今回の知事選で多数の偽情報が出回ったことだ。発信力の強い「インフルエンサー」らが「パワハラ疑惑はでっち上げ」など事実でない情報を拡散した。接戦となった他候補の評判を落とす偽情報も流布された。》(1月1日)。
 せめて偽情報が出回っていることを報道することはできないのだろうか? そうした意味で私もオールドメディアにはかなり不満だったのである。
 しかし「オールド」には伝統や歴史も感じる。取材をして裏付けをとる訓練を長年している組織はまだ利用できる価値があるはずだ。ネットに対して腰が引けてる場合なのだろうか。功罪含めて「オールドメディア」は今を考える重要な言葉なのだと思う。

  一方の陣営がSNSやYouTubeで積極的にデマをまきちらしているのに、新聞やテレビは「中立報道」を理由に、あくまで候補者の主張をそのまま流すことに徹していた。

 はたして、デマや真偽不確かな情報を蔓延している状況で「中立だから」といってあたりさわりのないニュース(「○○候補が駅前で主張を訴えました」みたいな報道)をすることが本当に中立なのか。デマを流す側が利する結果になっていないだろうか。


 国民のほとんどが新聞やテレビなどのマスメディアから情報を得ていた時代であれば、「選挙期間中は批判をしない」が公平だったかもしれない。でもお行儀の悪い人たちが誤情報をまき散らしている時代に、マスメディアだけが「私たちは何も言わずにおきましょう」とやっていていいのだろうか。

 古いメディアには古いメディアの良さがある。だけど時代が変わっても旧来のやり方をずっと守ることが正解ではないだろう、とおもうんだけどね。

 選挙期間中だからって急に黙りこむ、ってのはもうやめてもいいんじゃない? 選挙期間でも悪いことは悪いこととして報じる必要があるでしょ。それこそが本当の中立・公平じゃないの?


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