サム・キーン(著) 松井 信彦(訳)
寝る前にKindleでちょっとずつ読んでたんだけど……。
いやー、よく眠れた!
この本を読んでいるとてきめんに眠たくなってくる。入眠前読書にぴったり。
とにかくむずかしい。元素周期表にまつわるよもやま話がくりひろげられるのだが、たぶん素人向けに書いてくれているとおもうのだが、それでもよくわからん。
化学は苦手じゃないんだよ。むしろ高校時代は得意だった。大昔とった杵柄だけど、センター試験の化学は満点だった。
そんな「高校化学はざっと頭に入っているつもり」という自信をこの本はこっぱみじんに砕いてくれた。ほとんどわからねえ……。
元素周期表の周辺のエピソードをこれでもかってほど書いているのだが、とにかくむずかしい。「ポピュラー・サイエンス」なんて書いてあるけど、とても素人向けとはおもえない。『Newton』『日経サイエンス』レベルでは太刀打ちできない。
とはいえ断片的なエピソードの寄せ集めだから、部分部分では楽しめるところもあるんだけど。
我々が目にする元素周期表をつくったのは、メンドレーエフというロシアの化学者だ。
今ではあたりまえの周期表だが、つくられた当時は画期的なものだったようだ。
見つかっている元素を並べるのはメンドレーエフの他にも様々な人が挑戦していたようだが、メンドレーエフは「まだ見つかっていない元素を予言していた」というのだからすごい。なかなかできる発想じゃないよね。
ところでこの本には「メンドレーエフは原子の存在を認めていなかった」という衝撃的な文章があるのだが、これホント? 原子の存在を認めていない人が元素周期表をつくったってどういうこと???
さらっとしか書いていなくてさっぱり理解できない。ほんまかいな。
元素はどこでつくられるのか。
恒星(太陽のような星)がつくっているのだという。
が、それは元素番号26(鉄)まで。それ以降の元素は、恒星でもつくられないという。
んー、わからん! わからんけどすごい!
さっぱり理解できないけど、このスケールにとにかく圧倒される。
この現象、当然誰も見たことがなければ観測したこともないはずだけど、でも判明している。科学ってすごいなあ。わからんけど。
化学は政治や経済にも大きな影響を及ぼしている。化学兵器がつくられたり、資源をめぐって戦争が勃発したり。
1990年代、携帯電話を小型化するために密度が高くて熱に強くて腐食しなくて電荷をよく蓄える金属を求めた。それがタンタルとニオブで、多く取れたのがコンゴ民主共和国(当時はザイール)だった。
当時、コンゴでは紛争が起こっていた。そこにタンタルとニオブが資金をもたらしたことで、軍に金がまわり、紛争が長引いた。また儲けを求めて農民が鉱物探しに乗り出したことで、食糧難に陥った。
間接的ではあるけれど、携帯電話が小型化したことで命を落とした人がたくさんいたんだなあ。
化学が原因ではなく、化学が人々の中にある憎しみや凶暴性を増幅させているだけなんだけど。
アルミニウム。一円玉やジュースの缶などにも使われているごくごく身近な金属だけど、かつてアルミニウムには金よりも価値があった時代もあるのだそうだ。
アルミニウムを分離する方法を発見したチャールズ・ホールという化学者は莫大な財産を築いたという。
夢があるねえ。ひとつの金属を取り出すほうほうができたことで大金持ちに。今、我々の身の周りにどれだけアルミニウムが使われているかを考えたら当然だけど。
こういう化学者がちゃんと報われるのはいいことだ。そうじゃないケースが多いからなあ。
元素のはたらきに関する説明は難解だが、化学者たちのエピソードはおもしろい。
なかでも感服したのがド・ヘヴェシーというハンガリーの化学者の逸話。
「一度下げた肉を使いまわしているのではないか」という疑念を確かめるために、鉛とガイガーカウンターで検証……。化学者らしいクレイジーなエピソードだ。
ちなみに鉛は人体に有毒ですからね。ぜったいに真似をしないように。
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