2020年4月9日木曜日

何も聞かずにつきあってくれて

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「サンキュ」を使いこなせる人にあこがれる。

ぼくは「サンキュ」を言えない。もしかしたら人生で一度も口にしたことがないかもしれない。

「ありがとう」ならいえる。「ありがとうございます」も「いつもすみません」も「感謝いたします」も。外国人相手なら「Thank you very much」と言えるだろう。
でも「サンキュ」は言えない。
気心の知れた友人でも。


「サンキュ」が上手な人がいる。
「ありがとう」は堅苦しい、「あんがと」は偉そう、「どうも」は卑屈。そんなシチュエーションで的確な「サンキュ」をくりだす。
落とし物を拾ってあげたとか、ちょっとした頼まれごとを引き受けたときとか、そんな些細な感謝を伝えるタイミングで「サンキュ」を放つ。
それだけでその人と親密になった気がする。

「サンキュ」は使い方がむずかしい。
絶妙な距離感、当人のちょっと軽薄なキャラクター、発言のタイミング、気負いを感じさせない言い方。心技体がそろっていないと自然な「サンキュ」にならない。

たぶんぼくが無理に言おうとしたなら「あー……。えっと、さんきゅう、です……」みたいな変な感じになってしまう。軽い「サンキュ」とはほど遠い。

「サンキュ」の使い手は、人付き合いがうまい。
絶妙な「サンキュ」を操ることによって、いともたやすく人との距離を縮めてしまう。うらやましい。

昔から「サンキュ」が言えなかったぼくも三十代後半。
軽く「サンキュ」と言うのがよりむずかしくなった。「おっさんが無理しちゃって」とおもわれるんじゃないか、と考えてしまってますます言えない。

だからぼくはもう「サンキュ」はあきらめた。
たぶん今後死ぬまで「サンキュ」と口にすることはないだろう。

しかし。
幸いなことにぼくが住んでいるのは大阪。
大阪には「おおきに」という言葉がある。意味、軽さ、フレンドリーさ、どれをとっても「サンキュ」とほぼ同じ言葉だ。
一点だけ違うのは、「おおきに」には若々しさがないことだ。大阪でも若い人はまず言わない。「おおきに」を操るのは一定年齢以上のおっちゃん、じいちゃんだけだ。

「おおきに」には若作り感がない。これならぼくでも言えるかもしれない。
ちょっと練習してみよう。

あー……。えー、このブログを読んでくれて、えっと、おおきに、です……。


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