2020年3月8日日曜日

ラグビー発祥の地

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 昨日公園で保育園児たちとドッチボールしてたら、ふたりの子がボールの取り合いをして、そしたら規模が大きくなって数人でのボールの取り合いになって、もうそっちのほうがおもしろいからボール奪って逃げるっていう遊びをやってたら近くにいた小学生たち(二年~五年生)もなんだなんだおもしろそうなことやってるなって感じで入ってきて、そしたら当然小学生ばっかりにボールが渡って保育園児が手出しできない状態になったからぼくも「よっしゃ! 保育園児 対 小学生や! おっちゃんは保育園児の味方や!」って宣言して参戦して(気分は第二次世界大戦に参戦したアメリカ)、小学生からボールを奪って保育園児にパス出して、保育園児が奪われたら小学生がパス回しするのを必死に追いかけてスチールしてまた保育園児に手渡して、っていう遊びを三十分以上やっていた。

 久々に全力疾走したね。
 走って、ジャンプして、ボール奪いにくる小学生をブロックして、フェイントかけて、保育園児に指示出して、また走って……ってやってたから汗びっしょり。山王戦の湘北の選手たちぐらいの運動量だったからね。

「ボールを奪って敵に奪われないように味方にパスをする」というだけのシンプルなルールだったけど、けっこういい勝負になった。
 保育園児チームがボールを持っている時間と、小学生チームがボールを持っている時間、それほど変わらなかったんじゃないだろうか。
 ふつうに考えれば小学生チームが圧勝しそうなものだけど、大人のぼくが保育園児チームに入ったことでバランスが良くなった。高さもスピードもまだ小学生には勝てる。体力はかなわないが、ぼくもかつては長距離走をやっていた人間なので同世代のおっさんの中では体力はあるほうだ。
 それに小学生は「保育園児に怪我をさせないようにしないといけない」という制約があるが、保育園児チームには一切遠慮がない。全力で小学生にぶつかってゆく。さすがの小学生も、六歳児が全力でぶつかってきたらけっこうひるむ。
 慣れない人がトカゲを捕まえようとするようなものだ。人間とトカゲのパワーは比べものにならないが、トカゲは文字通り死にものぐるいの全力で逃げるのに対し、人間側は「怪我をしないように」「強くつかみすぎてトカゲが死んじゃったらイヤだ」といった気持ちが邪魔をして全力を出せない。結果、トカゲに逃げられる。
 同様に小学生はボールを抱えて走る保育園児に追いつくことはできても、そこから手が出せない。うかつに手を出すと怪我をさせてしまうからだ。敵陣営のパスミスを待つしかない。結果的にちょうどいいハンデが生まれる。

 で、やりながらおもったことは「これはゴールのないラグビーだな」。
 ボールを抱えて走る。敵に取られる前に味方にパスを出す。このへんはラグビーといっしょ。
 ただしゴールラインはない。だからトライもない。キックでのゴールもない。相手にボールを取られるまでは走りつづける。取られたら取りかえすために走りつづける。終わりもなければ休めるタイミングもない。ひい。

 そんでおもったのは、やっぱりラグビーのルールってよくできてんなってこと。
「ゴールがあったほうがいい」ってのもそうだし、それ以外の部分でも。

 ボールを投げてパスをするのだが、小学生の子が保育園児のパスをスチールすることはあっても、その逆はない。
 うまい人同士がパス回しをしていたら、よほど人数が勝っていないかぎり技術的に劣るチームがボールを奪うことは難しい。小学生チームからボールを奪うのはもっぱらぼくの役目だった。
 ここでラグビーのルールである「前方に投げてはいけない」を導入すれば、技術的に劣るチームにもボールを手にするチャンスがぐっと増えるだろう。後方に投げたり前方にキックしたりすれば、自然とパスミスも増える。

 あとボールを抱えている人間が倒れこんだら、収集がつかなくなる。みんながボールを奪おうと群がってくるのでボールは動かなくなる。危険でもある。
 ラグビーのルールである「倒れたらボールを手離さなくてはいけない」を導入すれば、危険も解消される。

 ラグビー誕生のエピソードとして
「イングランドのラグビー校の生徒が、フットボールの試合中にボールを抱えて走りだした」
というのはあまりにも有名な話だ。
 ぼくらが昨日やったのとほぼ同じような状況だった。
 そこからもみくちゃになってボールを奪いあう競技になり、「前方にパスしちゃいかんってことにしないと相手チームにボールが渡らないよね」「倒れたのにボールを抱えてたら危ないし見てるほうもつまらないよね」みたいなことに気づいて徐々にルールが整備されていったのだろう。

 ラグビーの歴史が垣間見えた気がした。


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