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綿矢 りさ
「かつて話題になった本を今さら読んでみる」シリーズ。
綿矢りさ氏が十七歳の若さで『インストール』で文藝賞を受賞したのが2001年。
『蹴りたい背中』で芥川賞を受賞し、著者のルックスも相まって文壇以外でもたいへん話題になったのが2004年。
へそまがりのぼくは「ふん。話題作なんか読むもんか」ということで文庫になってからも手を伸ばさなかったのだが、二十年近くたったしもういいだろうと(何が?)いうことで今さら読んでみた。
うーん、おもしろくない。
いやこれはぼくのせいだ。話題になったときにすぐ読まなかったぼくのせいだ。
「当時は有効に機能していたであろう小道具」が2020年の現在ではすっかり錆びついてしまっている。
「女子高生が小学生の男の子といっしょにインターネットを使って人妻のふりをして風俗チャットで小遣い稼ぎをする」
というストーリー、2001年には新しくて電脳的で不安を抱かせてくれるものだったんだとおもう。
女子高生も小学生もスマホを持っているのがあたりまえの2020年には、そんなストーリーは日常でしかない。何の新しさもない。
もちろん文学は設定の斬新さだけで成り立つものではない。が、『インストール』に関してはその設定に依存する部分がきわめて大きい。
というわけで今読んでもぜんぜんおもしろくない。当時はこんなものをめずらしがっていたんだなあとおもうだけ。かといって懐かしむにはさほど古くないし。
『潮騒』や『太陽の季節』や『限りなく透明に近いブルー 』も、発表当時はその新しい性風俗の描写が話題になったらしい。でも数十年たった今では「そこまで大騒ぎするほどのことか?」という感じだ(陰茎で障子をつきやぶる、とかは今でも異常行動だけど)。
まあ『潮騒』も『太陽の季節』も『限りなく透明に近いブルー 』も読んでないんですけど。
ってことで、文学には鮮度が短いものがある。鮮度が短いものは旬のうちに読んじゃいましょうね、という結論。
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