2019年11月18日月曜日

【読書感想文】革命起きず / 『ゴトビ革命 ~人生とサッカーにおける成功の戦術~』

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ゴトビ革命

人生とサッカーにおける成功の戦術

アフシン・ゴトビ(著)  田邊 雅之(取材・文)

内容(e-honより)
少年時代、イランからアメリカに移住。家族との別離や人種差別、苦学をしながらのUCLA卒業を経て、世界が注目するサッカー監督へ。数奇な運命と戦ってきた男だから教えられる逆境の乗り越え方と、組織を躍動させる秘訣。

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アフシン・ゴトビの半生とインタビュー集。
といってもサッカーにあまり興味のないぼくは、アフシン・ゴトビという名前すら聞いたことがなかった。
ゴトビといっても決済日のことではございません(関西ジョーク)。

イランで生まれ、13歳からはアメリカで育ち、韓国代表のコーチやイラン代表監督を経て、2011年からは清水エスパルスの監督を務める人物だそうだ。

この本の刊行は2013年だが、この時点では「ゴトビはすごいぞ! ゴトビが日本サッカー界を変える!」といった調子で書かれているが、残念ながらその後もゴトビはエスパルスで結果を出すことはできず、2014年シーズン途中で監督を解任されている。
もちろんチームの結果が悪いのは監督だけの責任ではないが、とはいえ、10位(2011)→9位(2012)→9位(2013)→15位(2014最終順位)という成績を見ると、少なくともJリーグにおいては“ゴトビ革命”は起こせなかったのだろう。

ぼくとしては「成功者の本」よりも、むしろゴトビ監督が退任した後に「なぜうまくいかなかったのか」を分析する本のほうが読みたかったな。
成功者の自慢話から学ぶことはないが、失敗から得られるものは多いから。



とはいえ、中盤の失敗エピソードはおもしろい。
アメリカのでの大学選手時代に実力はあったので監督に気に入られなかったから試合に出してもらえなかったエピソードとか(あくまで自分でそう言ってるだけだけど)、故郷イランの代表監督に就任したものの権力争いに巻きこまれて様々な妨害に遭った話とか。

オシム氏もユーゴスラヴィア代表監督時代に各方面から脅迫されたって言ってたけど、人気スポーツの監督ってとんでもなく気苦労の多い仕事だよなあ。もちろん采配や指導もたいへんだろうけど、それ以上に本業以外の邪魔が多くて。
国家元首よりたいへんな仕事かもしれない。

このへんの話をもっと読みたかったなあ。
後半はゴトビ氏の「私は〇〇だ。だからきっと成功するだろう」みたいな話が並んでいるけど、2019年の読者からすると「でもあなた成果出せずにクビになってんじゃん」としかおもえないからなあ。

現役でやっている人をヨイショしすぎる本は書かないほうがいいね。



韓国代表チームの参謀、そして日本のクラブチームの監督の両方を経験しているゴトビ氏ならでの「韓国と日本の共通点」はおもしろかった。
 ただしこういう例を除けば、やはり日本にいちばん似ているのは韓国だ。その最大のものがヒエラルキー、つまり「タテの人間関係」で社会ができている点だろう。
 タテ社会の意識の強さは、強いサッカーチームを作っていくうえでネックにもなっている。サッカーではいったんホイッスルが鳴ってしまえば、最低でも45分間は試合が続く。この間、監督はほとんど何もできないし、試合に勝つには選手が自分で考え、判断し、リスクを冒してチャレンジすることが不可欠になる。
 だがタテ社会に慣れてしまっていると、ピッチ上でもなかなか自分で判断が下せなかったり、年上の選手の指示を仰いでしまう。そんなことをしていたら何度チャンスをつくってもフイにしてしまうし、守備でもあっという間にゴールを奪われてしまう。
 また、タテ社会の発想に慣れていると、本来の実力を発揮できないという問題も起きてくる。私が日本に来て気がついたことのひとつは、日本人選手は練習の出来と試合のパフォーマンスにかなり開きがあるということだった。実際、エスパルスにも練習では本当に素晴らしいプレーができているのに、試合になると力を発揮できなくなる選手が多い。
韓国を毛嫌いしている日本人は多いけど(そして日本を毛嫌いしている韓国人もきっと多いんだろう)、それは両国の国民性が「似ている」からなんだろうなとぼくもおもう。

なまじっか似ているからこそ些細な違いが許せないんじゃないかな。
何から何まで違う国民性だったら「もうあいつらはほんとしょうがねえな」ぐらいで呆れることはあってもそんなに腹は立たない。
でも微妙に歪んだ鏡だから「なんでこれが通じないんだ!」っておもって嫌いになるんじゃないかな。

こういうこというと、嫌っている人は烈火のごとく怒るだろうけど。

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