2018年12月20日木曜日

フリーマーケットとぬいぐるみの呪い

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五歳の娘を連れてフリーマーケットに行った。

フリーマーケットなんて何年ぶりだろう。
ぼくは物欲のない人間なので、買い物が好きでない。買いたいものは本ぐらい。フリーマーケットに行くより古本屋やAmazonマーケットプレイスをめぐるほうが効率がいい。

しかし娘は「自分のお金でたくさんおもちゃを買える」ということで狂喜乱舞していた。

娘はお年玉の残り(五百円ぐらい)を持っていった。
「ほしいものあったら自分のお金で買っていいよ」と言うと、はじめはあまりピンときていないようだったが、いくつか買っているうちに「買い物って楽しい!」ということに気づいたらしく、あれも買うこれも買うと、気づいたら十個ほどのおもちゃを買っていた(それでもぜんぶで五百円ぐらい)。

無骨なマグネットとか、謎のキャラクターがプリントされたパジャマとか、大人からすると「えーそんなの買うの……」と言いたくなるようなものも選んでいたが、妙なものを買うたのしさもわかるので、あえて口出しはしなかった。

あまりに娘がたのしそうに買い物をしているので、「自分のおこづかいで買えるぶんだけだよ」と伝えていたにもかかわらず、予算を上回る服や本を娘がほしいと言いだしたときは「まあ服は実用品だし本は勉強になるからな……」とこっそりぼくの財布から娘の財布にお金をたしてあげたりもした。甘いぜ父親。



ぼくが唯一「それは買うのをやめといたほうがいいんじゃないの?」と娘に言ったのは、ミニーマウスのぬいぐるみだ。

ごそごそおもちゃをさぐっていた娘がミニーマウスのぬいぐるみを見つけて「これ買う!」と言いだした。
そのミニーマウスを見たぼくは「いやそれはどうだろう……」と顔をしかめた。

わりときれいなぬいぐるみだった。商品自体に欠陥があるわけではない。
値段は破格の十円。買いおしみするような金額ではない。

問題は、ミニーマウスのぬいぐるみがウェディングドレスを着て「LOVE」と書かれたプレートを持っていることだった。
ちなみに隣にはタキシード姿のミッキーマウスもある。
どう見ても結婚祝いだったぬいぐるみだ。
どういういきさつでこのミッキー&ミニーペアはフリーマーケットに出品されたのだろうか。

ちなみにぼくの家にも結婚祝いでもらった男女ペアのミッフィーちゃん(紋付き袴&文金高島田)のぬいぐるみがある。
妻の職場の人から送られたものだが、はっきり言って迷惑だ。ぼくにも妻にもぬいぐるみを飾る趣味はない。
実用性ゼロ・趣味にあわない・かさばる、という迷惑三拍子そろった贈り物だ。

だったら捨てればいいじゃないかとも思うかもしれないが、結婚の象徴のようなぬいぐるみを捨てるのはなんとなく気がひける。
迷信を信じるたちではないが、これをごみ箱に捨てたら結婚生活がうまくいかなくなるような気がする。

いらないのに捨てられない。
はっきり言って、こんなものお祝いじゃない。呪いだ。


フリーマーケットに出品されていたミニーマウスの話に戻る。
これを十円で出品した人は離婚したのだろうか。
ウェディング感まるだしのペア人形を十円で売るなんて、そうとしか考えられない。

いやぼくの思いすごしかも。
ただ単に合理的な考えの人で、「趣味にあわないから売っちゃおう」と思っただけかもしれない。ぼくのように「呪い」を感じなかったのかもしれない。

しかし出品者は感じなかったかもしれないが、ぼくは「呪い」を感じる。
特に、娘がミニーマウスを手にとって「これ買う!」と言ったときに、ミッキーマウスから漂ってくる「おいおれとミニーをはなればなれにさせる気か」という怨念をびんびんと感じた。

ぼくは娘に言った。
「どうしてもそれを買うんなら、ミッキーマウスもいっしょに買ってあげたら? 別々にしたらかわいそうじゃない」

娘はミッキーマウスも買うことを納得してくれた。



かくして、今ぼくの家にはどこかの誰かの結婚祝いのミッキー&ミニーの人形が飾られている。
まったく趣味じゃない。かさばる。

しかしこれを捨てたらどこかの誰かが離婚してしまいそうな気がする。
見知らぬ夫婦の円満までぼくが責任を負う義理はないんだけど、しかしなんとなく大事にしないといけないような気がする。

今、我が家にはダブルの呪いをかけられている。


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