『勝手にふるえてろ』
綿矢 りさ
三ヶ月くらい前に映画『勝手にふるえてろ』のDVDを観た。
映画がおもしろかったので原作小説も手に取ってみたのだが、
「あれ、なんかこぢんまりしてる……」という印象。
映画を先に観たのがよくなかった。
映画のヨシカは突きぬけたキャラクターだったのだが、それに比べると小説のヨシカはずっとまとも。拍子抜けしてしまった。
映画版の主人公・ヨシカは、人とコミュニケーションがとれない、他人の気持ちを理解しようとしない、そのくせ行動力だけはある、ひたすらいかれた人間だった。傍から見ているにはおもしろいけどお近づきにはなりたくないタイプ。
小説版のヨシカはちゃんと他人の痛みが理解できるし(理解するのが遅いけど)、自分の行動を反省したりもする。
小説を先に読んでから映画を観たら、二度楽しめたかもしれないなあ。
(※注 「ニ」ってのは自分に言い寄ってくる男につけたあだ名。ひどいあだ名だ)
なんかちゃんとしてるなー。ちゃんとしてない人が出てくる小説が読みたかったんだけどな。
この「自分の純情だけ大切にして、他人の純情には無関心」ってのは、まさしく自分に思いあたる。
学生時代、すごく好きな女の子に対しては「これだけ好きなんだから付き合ってくれてもいいじゃない。イヤだったらすぐ別れてくれていいから。まずはぼくという人間を知ってよ」と思ってた。
じゃあ、自分が好きでない子のことを知ろうとしてたかというと、百パーセントのノーだ。好きでない子のことは少しも知ろうとしていなかった。
若いときに「自分の直感だけを信じず、相手の直感を信じるのも大切かもしれない」という境地に達していれば、ずっと楽に生きられただろうなあ。
『仲良くしようか』という短篇も収録されているが、こっちはどんな内容かぜんぜんおぼえてない。二日前に読み終わったばかりなのに。そんな感じの短篇でした。
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