グレイヴディッガー
高野 和明
一年以上前に死んだはずなのにきれいな状態で発見された死体、異常な殺し方の連続殺人事件、「見えない炎で焼き殺された」焼死体、なぜか追われる主人公。
前半は謎だらけだ。犯人もわからなければ被害者の正体もわからない。被害者に共通していたのは骨髄ドナー登録をしていたことだけ。犯人の人数も謎だし、殺しの動機もわからない。主人公・八神が追われる理由も、ワルの八神が「どうしても骨髄提供をしたい」と考えて必死に警察から逃げ回っている理由もわからない。
うーん、謎が多すぎて何が何やら。
中盤で、タイトルになっている“グレイヴディッガー”という言葉が出てくる。
魔女狩りをしていた異端審問官たちを私刑に処していたのが“グレイヴディッガー”らしい。言ってみれば「『魔女狩り』狩り」。
これによってすべての謎がつながって一気に真相に近づく……とはならない。どうやら犯人が“グレイヴディッガー”を模倣して犯行をしているらしいということだけはわかるが、一向に真相は見えてこない。
ひたすら八神が追手から逃げまわっている姿だけが描写される。ついに捕まった、とおもったらまた逃げて、やっと捕まった、とおもったらまた逃げて、今度こそ捕まった、とおもったらまた逃げて……。
しつこい。もういいって。逃避行自体が目的の作品ならそれでいいんだけど、謎解きがメインなので逃亡劇は冗長に感じる。逃亡劇がなくても成立する小説だったんじゃないかな。
きれいな状態で見つかった死体、公安組織、骨髄ドナー、グレイヴディッガーという一見ばらばらに見える伏線が一本につながる手腕は見事。ただ要素が多すぎて荒唐無稽な印象も受ける。
“グレイヴディッガー”側も、“グレイヴディッガー”に狙われる側も、「その目的のためにそこまでやらんだろ……」という感じなんだよな。やってることの壮大さのわりに、目的がしょぼすぎる。
逆トロッコ問題みたいな感じ。「1人を助けるために5人の命を奪う」みたいなことをやってる。そんなやついるか?
犯行のスケールの大きさに動機が釣り合ってないように感じた。
あと最終的に「あいつもこいつもお咎めなし」で決着したのも、なんか腑に落ちない。あんな都内各地で大騒動をくりひろげておいて、みんな無かったことになっちゃうの!?
ということで、おもしろい小説ではあったんだけど、風呂敷を畳むのに失敗していろんなものがはみ出してしまった印象。遠い外国が舞台、とかのほうがまだすんなり読めたかも。
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