敗者復活戦
トップバッターのミカボの徳永英明クイズがすごくおもしろくて(何年か前の予選でも観たことあったけど二度目でも変わらずおもしろい)、これは期待できるぞとおもっていたら、結局ミカボがいちばんおもしろかった。
勝ち上がりはカナメストーン。最終3組中にラストイヤー組がいたらそりゃあ勝たせたくなるよね。まあ場を盛り上げていたし、「決勝で何かやってくれそう」という感じがいちばんあったのはカナメストーンだったかな。
決勝戦
ヤーレンズ (結婚したい)
過去2年の決勝で披露していたコント漫才ではなく、他愛のないテーマで軽妙なおしゃべりの披露するスタイル。原点回帰のようなネタ。そういやヤーレンズってこういう漫才をするコンビだったよなあ。長々とどうでもいい話をして、最後の10秒で「ネタやりまーす」というスタイル。この軽さこそヤーレンズの真骨頂という感じがする。
ヤーレンズのラジオを何度か聞いたことがあるが、こんな感じだった。無理をせずに自分たちのスタイルを貫いても認められるようになった、という点でヤーレンズにとってはすごくいいことだと思う。
「栄光の孤立」「マーガレットサッチャでもいい」のような、伝わらないのがわかっていても自分たちが言いたいと思っているフレーズをねじ込んでくる感じもすごくいい。いい意味でM-1向けじゃないというか。M-1グランプリを卒業してもやっていける立派な漫才師になった姿を見せてくれた。
『さようなら、ドラえもん』におけるのび太の「見たろ、ドラえもん。勝ったんだよ。ぼくひとりで。もう安心して帰れるだろ」を彷彿とさせてくれる漫才だった。
個人的には、ネタ後の「手ごたえあり!」がスルーされていたのがおもしろかった。カズレーザーがM-1ファイナリストだったことなんてみんなおぼえてないよなあ。ぼくもこれ見るまで忘れてた。
めぞん (女友だちの彼氏のふりをする)
チュートリアルやさや香のような熱演型漫才。とはいえ、2006年時点で完成されていたチュートリアルに比べると、緩急の使い方や声のトーンに粗さが感じられた。こういうアドリブの利かないかっちりしたネタをやるのであれば、細部まで完璧であってほしかったな。「逃げろ!」の唐突さは好きだった。
カナメストーン (ダーツの旅)
敗者復活戦ではじめて見たコンビだけど、風貌に苦労してきた感じがにじみ出ていていい。あふれ出るくたびれ。
敗者復活組、ラストイヤー、にじみ出る苦労人感、明るくハイトーンなツッコミと応援したくなる要素が詰まっていたコンビ。……だっただけに、過失致死に発展してしまうブラックな展開で悪い方に裏切られた気分になってしまった。勝手に想像していた芸風と似つかわしくなかった。
隙間まで細かいボケが詰め込まれていて、15年間の集大成であることが感じられる漫才でした。
エバース (ドライブデート)
過去に見たことのあるネタだったけど、それでも大いに笑った。改めて見ると、「目的地がもう江ノ島水族館に決まっていること」までもがおもしろくなってくる。
「人間の中ではだいぶ車っぽい」の妙な説得力、「車の免許持ってたらレンタカー借りるだろ」という急な正論、巧みな話術で妄想の世界にひきこみながら「思われねえよ」「都内もやだよ」で現実と虚構の間を揺さぶる技術、そして終盤まで失速することなく「陰性。やばっ!」「なぜならまだこいつを裁く法律がこの世にないから」で強烈なパンチを叩きこむ。完璧なネタだった。
最初に見た時も感心したけど、やっぱり「陰性」で笑いをとるところがすごい。凡百な漫才師だったら「覚醒剤やってる」で笑いをとりにいくところだけど、「覚醒剤やってない」で笑いがとれるところがすばらしい。真空ジェシカもやっている手法だけど、「逆にまともなことを言うことで笑いを生みだす」ところまでたどりついているのを見ると、漫才って進化したんだなあとしみじみ思う。
真空ジェシカ (ペーパードライバー講習)
もう一個上の階だと思った、で見事につかんだのに、「車椅子テニスの選手が二連続で車のネタ」はほんと余計だったなあ。本人も反省していたらしいけど。あれ聞いたとき、ぼくは「ひとつ前も車のネタだったっけ。ああ、ルンバ車か。でもあれあんまり車のネタって印象ないけどなあ。それより車椅子の人をそういういじり方してもいいのかな」とかあれこれ考えてしまった。その割におもしろいコメントでもないし。ネタの邪魔にしかならないフレーズだった。
発想の豊かさは相変わらず。免許のクソ問題、走るボタン、思い出が一個しかない、など笑わされるボケが盛りだくさん。そして真空ジェシカはそれぞれのボケが有機的につながってるのがいい。それだけに前半で少しつかみきれなかったことが惜しまれる。
いちばん感心したのは、教官が発煙筒を吸うボケ。単体でもおもしろいが、あれがあることでその後の展開の中での演じ分けがスムーズになっている。「発煙筒を吸っているのが教官」とすぐわかるので、別の人を演じていてもすっと教官に戻ってこられる。ここまで計算しているのだとしたらすごい。
ヨネダ2000 (バスケドリブル)
「100万円めざしてバスケットボールをドリブルせよ」という挑戦をしていたら松浦亜弥が出てきて邪魔をされる、というシュールなネタ。
やっていることはむちゃくちゃだったが、徐々に難度が高くなるところや出なかった高音が出るようになるところとか、妙なストーリー性があったのでなんとかついていけた。今まで観たヨネダ2000のネタは序盤でついていけなかったので、あんなネタをやりながらもちゃんと見せ方を工夫しているんだろうな。あややに得はないとか謎の引き戸とか細部の工夫もいい。
ところで、誠のレイアップシュートがあんまりきれいじゃなかったのが残念。あれが美しいフォームだったらもっとおもしろかったのになあ。
たくろう (リングアナ)
ぼくがたくろうの漫才をはじめて観たのは2018年の準決勝だったかな。その時点で十分おもしろかった。その後も関西のYTV新人賞の予選などで目にする機会は何度もあったが、言ってしまえばおもしろさはあまり変わってなかった。早くから完成されていたがゆえに小ぢんまりとまとまってしまっていた。赤木さんがおどおどとしながら強いフレーズを言う、というスタンス。
だが今年のネタはずっと笑いやすくなっていた。駒場さんも言っていたが、無茶な追い込まれ方をしておどおど言うに足る状況を設定したことでぐっと良くなった。自信なさげにおどおどしてる人は「笑い者にしていいのかな」という感じがしてしまう。でも「そりゃあおどおどするよな」の状況を用意することでわかりやすく笑えるようになった。ボケとツッコミではなく、中ボケと大ボケ。
ただ大喜利の羅列なので個人的にはそんなに好きなネタではなかった。
ドンデコルテ (デジタルデトックス)
声質がいいね。ほんとにセミナー講師の声質をしている。あの声で「厚生労働省の定めた基準によると……」というと、漫才の大会にふさわしくなくて逆に引き込まれる。安心感のある声と堂々とした態度で情けないことを主張するギャップがたまらない。
去年のブログを見返してみたら、敗者復活戦のドンデコルテの感想で「二年後ぐらいに決勝行くかもねえ」と書いていたが、思っていたよりも早く完成されていた。個人的には去年の恋愛がうまくいかない中年男の悲哀を描いたネタのほうが好きだったけどね。
「現実をスワイプ」「目覚めるな」「説得力だけがある」など、おもしろいフレーズが盛りだくさん。このネタのもっとロングバージョンも観たいなあ。
豪快キャプテン (小さいカバン)
二人が会話をしているが、二人とも一切相手に歩み寄る気はなく、とうとう最後まで平行線をたどったまま交わることがない。そのディスコミュニケーションのおもしろさこそが豪快キャプテンの魅力なのだが、あまり刺さらなかった。こっち側のテンションの問題な気もする。すごくハッピーなときに見たらめちゃくちゃおもしろいのかも。
数年前の敗者復活戦でやっていた「わたし、にじっぽん」のような、単体でおもしろいフレーズがあればもっと笑えたのかもなあ。あとあの感じでいくんだったら最後まで熱量演じてほしかった。
ママタルト (初詣)
51,044,649円からの猪瀬都知事、神社倒壊というママタルトらしいギャグマンガ的世界観あたりまでは良かったんだけどね。ボケ、ツッコミともにたっぷり間を使うコンビなので、その分一発の破壊力が大きくないときついよなあ……。ここは豪快キャプテンとは逆にストーリーを進めすぎなんじゃないかという気がする。作品としてはきれいなんだけど。
最終決戦
ドンデコルテ (町の名物おじさん)
「名物おじさんになる」自体はさほど新奇な発想ではないが、保険料の支払いが増えた、介護保険、墓と固めの話題で丁寧に振るあたりが実にうまい。奇をてらったことを言っているようで自転車と光に意味を持たせる理屈っぽさ、「いえ、あなたが聞いた」のような小憎らしい言い回し、聞き役にまわりながらも「大型新人」「言語化」などさりげなくワードを添える小橋さんのサポート、中だるみしないよう後半に別タイプの名物おじさんを出してくる展開、つくづくよくできたネタだ。短く感じたなあ。もっと長い時間で聞きたい。
エバース (腹話術)
これはネタの選択ミスだよなあ……。腹話術の話を切り出した時点で「町田を人形にする」という展開が読めてしまうし、一本目の「町田に車になってもらう」よりも弱くなってる。
見た目でわかりやすく笑えるし、それぞれの普段見せない顔も見せるので、ファンの前でやったらウケるんだろうなあ、というネタ。危険だよね、ファンにウケるネタは。
エバースは絶妙の間でツッコミを入れてくるのが心地いいんだけど、このネタに関しては観ている側が欲しているタイミングよりツッコミがずっと遅かったなあ。
たくろう (ビバリーヒルズ)
すばらしい設定。冒頭の「英語じゃないと意味ないんちゃう」からはずっとボケの世界にいる状態なので、何を言ってもおもしろい。実際、「ニューヨークでテトリスさ」なんて大喜利の答えとしてはべつにおもしろくないんだけど、設定のおかしさのせいで笑いにつながる。
何より、赤木さんの目がずっと泳いでるのがいい。ふだんからああいう人だけど、追い込まれる世界にしっくりはまっていた。
一問一答大喜利だけでなく、ボケた後に「さすが大手だ。ばちばち当ててきやがる」で追撃したり、ナンシーの家に行くことをためらってる内向的人間のもやもやを描いていたのが実に良かった。「一応連絡だけ」「行って変な感じに」「あれだったら帰るよ全然」あたりは誰もが経験したことがあるだろうけど、これを漫才に落としこむ手法は他に類を見ない。
ということで優勝はたくろう。特に最終決戦は、隙間まで笑いで埋め尽くしたいいネタでした。

0 件のコメント:
コメントを投稿