浅暮 三文
ことわざの「謎」についてあれこれ考察をめぐらせたエッセイ。科学、歴史、社会学などの知識を駆使してあえてことわざにつっこむ、という空想科学読本的な本だ。
すべてのエッセイが「私はミステリー小説家である」の一文で始まり、けれど話はあっちに行き、こっちに飛び、右往左往したままどこかへ行ってしまう。早い段階でことわざとは関係のない話になることもしばしば。
自由なおしゃべり、という感じだった。
エッセイとしてはとりとめがないが、随所にちりばめられている豆知識はおもしろかった。
『「二階から目薬」による殺人は可能だが、コントロールがいる。』の章より。
二階から目薬をさすと、無風とおもえる室内でも風に流されてずれる。江戸川乱歩の『屋根裏の散歩者』は、屋根裏から下で寝ている人に向かって毒薬を垂らして殺害するという話だが、現実には相当むずかしいみたいだね。昔の家だから今よりずっとすきま風も入っていただろうし。
『「火のない所に煙は立たぬ」どころか人間まで燃える。』の章より。
己も含めて、周囲一帯を燃やしてしまう植物があるそうな。なんちゅう怖い能力。蔵馬が使う魔界の植物じゃん。
『「蛇に睨まれた蛙」は剣豪並みに強い。』の章より。
蛇に睨まれた蛙は動かなくなるが、それは蛇をビビっているわけではないそうだ。
ふつうに考えれば、捕食者と敵対したとき、一瞬でも早く行動を起こしたほうがいい。だが跳躍中に方向転換のできないカエルは、やみくもに跳ぶと格好の餌食になってしまう。だから蛇の動きを見てから動こうとする。一方の蛇も、蛙の動きを見てから攻撃を開始したいのでじっと機を待つ。
一時間以上も互いを牽制しあう。まさしく宮本武蔵と佐々木小次郎の対決のようだ。
ということで、エッセイとしては読みづらかったけど、雑学集としては十分おもしろい内容でした。
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