大竹 文雄『競争と公平感 市場経済の本当のメリット』という本に、こんな話が紹介されていた。
「男性ホルモンであるテストストロンという物質が多く分泌される人ほど、手の人差し指に比べて薬指が長い傾向にある。テストストロンは筋肉量や瞬間的な判断力をもたらすので、優れたスポーツ選手は人差し指よりも薬指が長い傾向にあるはずだ」
という説があった。
この説を証明するために、スポーツ選手たちの指の長さを測りたい。だが多くのアスリートたちに会って指の長さを測らせてくれというのはかんたんではないし、また現役選手の場合は評価がむずかしい。今は大した選手ではなくてもこれから大成するかもしれないからだ。また、何をもって優れた選手とするかもむずかしい。陸上競技などであれば記録で単純に比べられるが、球技などの場合はひとつの指標で優劣を比べにくい。
できるだけ多くの選手の、さらにはできれば引退した選手の指の長さを測る手段はないものか……と考えた著者がたどりついた方法がこちら。
なるほどなあ。
たしかに大相撲の力士はしょっちゅう手形を押すから、指の長さを調べる資料には事欠かない。手形なので引退した力士のデータもとれる。
また、たとえば野球であれば打率、長打率、出塁率、OPS、本塁打数、盗塁数、勝率、防御率、奪三振数、セーブ数、失策率などいろんな指標があるけど、相撲の場合は基本的に勝ち負けだけなので成績もデータとして扱いやすい。
「人差し指と薬指の長さの比」と成績の相関を調べるには、大相撲ほど適した競技もないわけだ。
おもしろいね。これまで何万枚という力士の手形がとられただろうけど、誰一人それが後世の研究資料になるなんておもってなかっただろうね。
本の本筋とはあまり関係ないんだけど、こういう逸話を知っておもわずにやりとしてしまうのは読書の楽しみのひとつだ。
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