2016年6月12日日曜日

【エッセイ】腹まわり状態方程式

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健康診断に行った。
体重は去年といっしょだった。
なのに、腹まわりだけが4.5センチも増えている。

4.5センチ。
ということは一寸五分。うん、ぴんとこない。

どうしたことか。
じつに気味が悪い。
芥川が言うところの「唯ぼんやりした不安」だ。ちがうな。

体重も増えているのならまだ納得できる。
単に太っただけなのだろう。
しかし体重は増えていない。それなのに腹まわりだけが膨らむなんてことがあるだろうか。
しかも一寸五分も。


待てよ。
この状況、どこかで習ったぞ。
本棚から『高校化学便覧』を引っ張り出してみる。
あった。気体状態方程式。

 P×V=n×R×T

Pは圧力、Vが体積、n が物質量、Rは定数、t が絶対温度。

ふむふむ。
ええっと。Vが体積だから、腹まわりが増えたということはVが増加したということになるな。
体重が変わっていないわけだから n は変わってない。
Rも定数だから変わらない。
つまり、P(圧力)が減ったか、T(温度)が増えたということだね。
おっ、だいぶ原因が絞れてきたぞ。

温度は変わってなさそうだな……。
健康診断は病院の中でやってるから室温はほぼ一定に保たれているし、熱があったわけでもない。
ってことは圧力が減ったということになるけど……。

あっ!
おもいだした!

たしか去年は、少しでも腹まわりを減らそうと、巻き尺を腹にあてられてる間、腹筋に力を入れていたんだった。
ぐっと腹に圧力をかけて、おなかをへこませていたんだった。
そして今年は見栄をはるのを忘れていたんだった!

ああ原因がわかってよかった!

やっててよかった気体状態方程式!

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