2016年6月14日火曜日

【エッセイ】おにぎりの誤用

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独壇場とか的を得るとか、本来の意味で用いられない言葉は多い。
日本語の誤用。
でも誤用されているのは日本語だけじゃない。

おにぎりも誤用されている。

正確にいうと、おにぎりの海苔。


コンビニでおにぎりを買うと、ごはんと海苔の間にビニールがはさまれていて、それを抜き取ってから食べることになっている。
海苔はぱりぱり。

あれはあるべき海苔の状態ではない。
海苔を誤用している。

本来、おにぎりの海苔というのはしっけているものです。


思いかえしてください。
幼いころ、遠足のお弁当に入っていたおにぎりを。

海苔がぱりぱりでしたか?

冬場の唇みたいに乾燥していましたか?

ちがいますよね。
そんなことないですよね。

ごはんの水分をたっぷりと吸って、じっとりと湿っていましたよね。

そうです。
あれが正しいおにぎりの姿です。

そもそも二、三十年前は冷蔵庫も小さかったから、ほとんどの家庭で海苔は冷蔵庫に入れていなかった。
小さい缶に入って冷暗所で保管されていた。
だからおにぎりに巻きつける前からじゃっかんしっけていた。

それにおにぎりを作る機会なんて、お弁当を持っていくときに作るか、余ってしまったごはんを置いておくためにおにぎりにしておくか、それぐらいでした。
いずれにせよ「今すぐは食べない」という状況でにぎるものでした。

だからしっけていてあたりまえ。
乾燥していたら逆に不自然。

もし殺人現場のマンションにおにぎりが置いてあって、そのおにぎりの海苔が乾燥していたら、「犯人はまだ遠くに行ってないはずだ!」ってなりますよ。
ひょっとしたら、まだバスルームあたりに殺人犯がひそんでる可能性もありますからね。怖いですね。海苔の乾燥したおにぎりは。


海苔の乾燥したおにぎりなんて、コンビニのおにぎりだけなんです。

じゃあなぜコンビニのおにぎりは、わざわざあんなビニールをはさんでまで、海苔をしっけないようにしているのか。

ここからはぼくの推測なんですが、あのコンビニおにぎりを開発した人間は、おにぎりと寿司をごっちゃにしていたんじゃないでしょうか。

寿司の海苔は乾燥しています。

あたりまえです。
寿司は鮮度が命です。
おにぎりみたいに長時間置いてから食べたりしない。
たった今にぎりましたよ、という鮮度の証明のために寿司の海苔は乾燥している必要があります。
ウニやイクラの軍艦巻の海苔が、水分をたっぷりと吸ってべちゃべちゃになっていたら食べる気がしませんからね。

これがおにぎりの海苔の誤用です。
擅と壇の字をごっちゃにして独擅場を独壇場と書いてしまうように、
的を射ると当を得るをごっちゃにして的を得ると言ってしまうように、
おにぎりと寿司の用途をごっちゃにして、おにぎりの海苔を乾燥させてしまったのです。

これは断じて許されるべきことではありません。

なぜなら、不器用なぼくがコンビニのおにぎりを食べると、海苔が乾燥しているせいで、破れた海苔がばらばらに飛び散って、周囲から「だらしないやつ」と思われてしまうという個人的な理由があるからです!

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